ワインファンに朗報?ブドウの収穫期を教える「電気仕掛けの舌」が登場

2014年1月8日 18:30

 スペインのバレンシア・ポリテクニク大学の研究チームが、ワイナリー「トッレ・オリア (Torre Oria)」の協力の元に「電気仕掛けの舌」を開発した。ブドウの糖度と酸度から熟し具合を計測し、収穫のタイミングがわかるという。

 この「舌」は、ステンレス製のシリンダーの内側に8つの電極をつけたものだ。ボルタンメトリーという、溶液に電流を流してその変化によって組成を分析する技術が応用されている。研究チームは、バレンシア各地のブドウ園で1ヶ月に渡り、ワイン醸造に使われる8種類のブドウをこの「舌」で計測した。得られた結果は、従来の手法で計測された結果と非常に強い相関関係にある。

【ワイン醸造における糖と酸の関係】

 糖分は発酵を促進し、酸は抑制する。そのため、良いワインをつくるには糖度と酸度のバランスを取ることが重要だ。収穫を遅らせるほどブドウの糖度は増すので、例えばスイートワインを造るのには最後に収穫されたブドウを使う。また、ブドウの品種によっても糖度は変化する。メルロー種のブドウは糖度が高いため、早目に収穫されるのだ。

 糖度も酸度も、今までも様々な方法で測定が可能であった。屈折計を用いれば一掴みの葡萄の糖分量を計測でき、酸性度はリトマス試験で導き出せる。しかし、タイムラグが発生しないようブドウ園のその場で計測できる必要があった。

【新しい「舌」のメリット】

 ワイアードによると、電気を使って味を計測する「舌」は、既にいくつか開発されている。一つは、ある発泡ワインがどんな性質のものであるかを分析するもので、もう一つは、ワインの味を金属味、塩味、甘味、酸味に分析して数値化するものだ。しかし、今回開発されたもののように、ブドウの収穫期を教えてくれるものではなく、生産者はブドウの味や手触りによって、長年の経験から収穫のタイミングを判断していた。

 「舌」は安価に計測ができ、また持ち運びが可能だ。研究チームのメンバー、マニェス氏は「熟し具合を査定するにあたって後者は特に有用だ、現在のメソッドでは、大抵の場合、実験室に持ち込んで更に分析しなければならないから」と語っている。エンジニアリング・アンド・テクノロジー・マガジンによれば、現地で計測・分析ができることが「舌」の強みであるとブドウ生産者は見ている。

【ワイン醸造過程へも応用されるか】

 また、研究チームは、収穫後のワイン醸造過程へこの技術を応用するべく研究を進めているとワイアードは伝える。搾ったブドウを樽に詰めて発酵させる間も、「バランスを取る」必要があるためだ。醸造家は、毎日の温度管理によって発酵を調整しなければならない。温度が高すぎればアルコール度が下がり、低すぎればタンニンと色が十分に出ない。「この機械で発酵のプロセスを継続的にモニターできるので、生産品をよりコントロールできるようになり、究極的には競争力が高まる」とチームメンバーのカンポス氏は期待する。

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