“どうして日本人はパリ好きなの?”国内外のユーザーの議論の結末は
2014年1月8日 18:15
アメリカ大手ソーシャルニュースサイト「レディット」で、「なぜ日本人はパリが好きなのか」という疑問が出た。
【歴史的背景、まだ見ぬヨーロッパへの憧れ】
最初の投稿者は歴史的背景に触れた。日本人がフランスに憧れを抱くようになった原点は、第二次世界大戦前にさかのぼると言う。
・明治維新以降、教養人たちは西洋人と対等に渡り合うために渡欧し勉強したいという思いに駆られた。しかし当時の日本で一般人の海外渡航は困難で、輸入されてくる欧州の文化から、まだ見ぬ地に想いを巡らせることが精いっぱいだった。中でも壮麗なパリのアバンギャルドに魅せられたに違いない。
その後、海外旅行が現実のものになると、欧州渡航は富と学識の象徴となった。中でもパリは自慢に値する地であったのだろうと言う。
【ヨーロッパの日本趣味「ジャポニズム」】
文化的にも、日本がフランスの多大な影響を受けている、という意見が多い。それと同時に、日本が一方的に影響を受けていたわけではなく、フランスでは「ジャポニズム」という日本趣味が最高潮に達した。
・パリは、トゥールーズ・ローレック、ヴァン・ゴッホに代表される印象派に影響されて、それまでとは傾向を変え、浮世絵に魅せられるようになった。それによって「ジャポニズム」というジャンルが最盛期を迎えた。
・影響は絵画にとどまらず、ファッションや文学にも及んだ。アール・ヌーヴォーの一部は、「ジャポニズム」に影響を受けているほどだ。オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」などは顕著な例だ。
【「パリ症候群」のルーツは?】
ウィキペディアによると、「パリ症候群」とは異文化における適応障害の一種であり、カルチャーショックの一種、とある。憧れのパリというイメージと、現地での実際の生活のギャップに適応できずに、外国人が陥るうつ病に近い症状だという。この原因に関しては、示唆的なコメントが寄せられていた。
・日本の女性誌における「ぜいたく(luxe)」は、欧州上流階級の洗練された優雅なライフスタイルをイメージさせ、日本人は欧州の贅沢品を物価的価値のつかないものとして捉える傾向があるのではないか。実際のところフランス人は、日本人が憧れる「ぜいたく」に大した価値を見出していない。その誤認識が「パリ症候群」の始まりではないか。
日本のメディアも、パリはきれい、安全、素晴らしい文化、という肯定的な情報を多く発信することによって、日本人の憧れを助長する傾向にある。
【フランスのイメージにつきまとうノスタルジー】
日本人のフランス文化への憧れは、戦前のフランス映画や音楽に影響されたもので、シャンソンなどのジャンルが生まれた。この動きに対して寄せられた意見には次のような郷愁に言及するノスタルジックなものが多く見られている。
・戦後になってアメリカ文化が流れ込んでくると、フランスを始めとする欧州文化は時代遅れと感じられるようになったのだろう。一方で、最先端というイメージからは離れても、フランスには独特の想いが根強く残る。
・流行の最先端でイメージされるのがNYになっても、パリは古き良き日々を彷彿とさせる、漠然とした郷愁が漂う。
・フランスという国そのものというより、そこにつきまとう懐かしさ、郷愁が人の心を離さないのではないか。
・近代文化大国として知られるフランスが、20世紀初期のイメージに喚起される感情と、切り離しては考えられないというのは興味深い。
我々のパリ、そしてフランスへの憧れの始まりは明治維新にまでさかのぼり、現代に至るまでその形は変化しながらも、普遍的なものへと変化しつつあるのかもしれない。