【アナリスト水田雅展の2014年株式・為替相場展望】2014年もトレンドは円安・日本株高、焦点は米国の金融政策と日本の消費増税の影響

2014年1月5日 13:45

■春から夏にかけて一旦調整

 2014年もトレンドとして円安・日本株高を想定する。春から夏にかけては米国の長期金利上昇や日本の消費増税の影響を警戒して一旦は調整局面となりそうだが、金融危機から脱した米国の景気拡大が牽引する流れに大勢として変化はなく、年後半には脱デフレ・日本経済再生に向けた流れも実体経済で確認しながら、リスクオンの円安・日本株高の動きを強めるだろう。年間の予想レンジとしては1米ドル=95円~120円、日経平均株価1万4000円~2万円を想定する。

 年間を通しての焦点は米国の金融政策と日本の消費増税の影響だろう。米FRB(連邦準備制度理事会)は2013年12月開催のFOMC(連邦公開市場委員会)で量的緩和の縮小開始を決定するとともに、緩和的な金融政策を長期間継続することも示した。そして世界の金融市場は米国景気の拡大を好感する形でリスクオンの流れを強めている。ただし2014年は量的緩和の縮小ペース、量的緩和の終了時期、そしてゼロ金利政策解除(金利引き上げ)の時期に対する見方が焦点となり、米国の主要経済指標や要人発言などを睨みながら思惑が交錯しそうだ。

 2月には先送りされた連邦政府債務上限引き上げ措置の期限を迎えるが、現時点では解決に向けた楽観的な見方が優勢のようだ。今回も直前まで協議が進まずチキンレースが繰り広げられる可能性もあるが、この問題を結果的に大きな波乱なく通過すれば当面はリスクオンの流れが継続するだろう。ただし、その後の米国の主要経済指標で強い結果が相次ぐ状況になれば、2015年後半とされるゼロ金利政策解除の時期が早まるとの見方が浮上しそうだ。この場合は米国の長期金利が上昇ペースを加速して、外国為替市場や株式市場ではリスクオフの動きを強める可能性があるだろう。米国の主要経済指標が強すぎず弱すぎず、緩やかな米国景気拡大というのが金融市場にとってベストシナリオとなりそうだ。

 日本の消費増税の影響については4月~6月期のGDPを一時的にマイナス成長に押し下げた後、7月~9月期にはプラス成長に回復するとの見方が有力だ。しかし実際に消費増税実施の時期が接近すれば、あるいは消費増税実施後の主要経済指標を見て、景気や企業業績へのマイナス影響をあらためて売り材料とする動きが強まりそうだ。この場合は日銀の追加金融緩和が焦点となる。日銀が早い時期に予防的な追加金融緩和に動けば調整は小さく、逆に追加金融緩和に躊躇すれば調整が深くなり、追加金融緩和督促相場となる可能性もあるだろう。

 米国景気拡大、日米金利差拡大、そして日本の脱デフレ期待で1年間を通してはリスクオンの円安・日本株高のトレンドだが、1年間の流れを四半期ごとにイメージすれば、1月~3月は消費増税の影響を警戒しながらもリスクオンの局面、4月~6月および7月~9月は消費増税の影響を見極めながらリスクオフの調整・モミ合い局面、10月~12月は日本の脱デフレ本格化に対する期待感を強めながらリスクオンの局面と想定する。

■年後半には脱デフレ・日本経済再生に向けた流れを確認してリスクオン

 1月~3月は季節要因で外国人投資家の買いが入りやすいとされるうえに、400万口座を超えたとされるNISA(少額投資非課税制度)での新規資金流入も需給面の支援材料となってリスクオンの局面となりそうだ。NISAに流入する新規資金が投信を経由して海外市場に向かえば円安要因ともなる。米国の連邦政府債務上限引き上げ問題を大きな波乱なく通過すればリスクオンの動きが一段と強まり、日経平均株価は2007年2月の1万8300円39銭にチャレンジする可能性もあるだろう。ただし消費増税の影響を市場がどの時点から警戒し始めるのか、どの程度警戒するのかについて注意が必要だろう。

 4月~6月および7月~9月は、消費増税の影響を見極めたいとしてリスクオフの調整・モミ合い局面となりそうだ。政府の5.5兆円規模の経済対策の効果が下支えするとはいえ、やはり消費の反動減は避けられない。さらに4月~5月の主力企業の2013年度決算発表では、消費増税の影響を主因として保守的な2014年度見通しが相次ぐことがほぼ確実だろう。2014年度減益見通しが続出する可能性も高いだけに、こうしたことも売り材料にされるだろう。ただし2013年後半の株式市場の動きを見ると、消費増税に伴う駆け込み需要に対する期待感を通り越して、すでに消費増税後の反動減に対する警戒感を織り込み始めているようにも見える。このため4月~6月を通過すれば悪材料出尽くし感が広がる可能性もあるだろう。

 10月~12月は消費増税のマイナス影響を警戒した調整が一巡し、脱デフレ・日本経済再生に向けた流れを実体経済で確認しながらリスクオンの局面となりそうだ。期初時点では保守的な見通しを公表していたとして2014年度企業業績の上振れ期待も高まるだろう。2013年10月~12月のような証券優遇税制廃止に伴う節税対策売りはなく需給面の不安も小さいだろう。そして日経平均株価が2007年2月の1万8300円39銭を突破すれば、チャート面で長期トレンド好転を確認することになり、日経平均株価2万円台が視野に入る可能性もあるだろう。

 この他に想定されるリスク要因としては、連邦政府債務上限など米国の「財政の崖」問題が再燃すること、米国の長期金利上昇を警戒して米国株が一旦は調整局面に入ること、新興国市場からの資金流出懸念が強まること、主要銀行ストレステストや銀行一元管理問題などを巡る不透明感でユーロ危機が再燃すること、シャドーバンキング(影の銀行)問題などで中国の金融不安や景気失速への警戒感を強めること、東アジアの地政学リスク(日中間の緊張、中国の社会不安、北朝鮮問題など)が高まること、米国の中間選挙に向けてオバマ米大統領がレームダック化すること、安倍晋三首相が規制改革よりも憲法改正問題などに重点をシフトさせて内閣支持率が急低下すること、日銀が追加金融緩和に踏み切らないことなどがあるだろう。

 安倍晋三内閣が6月に取りまとめる予定の新成長戦略については、すでに大胆な規制改革に対する期待感が大きく後退しているだけに、法人減税、労働規制緩和、農業参入自由化などの面で規制改革に前向きな姿勢を示せば、逆にポジティブ・サプライズとして好感する可能性もあるだろう。2015年10月の消費税率引き上げ(8%から10%へ)については、12月に最終判断する予定で軽減税率の導入などが話題となりそうだが、波乱の可能性は小さいだろう。なお、年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が積極的な株式運用に動き出せば、需給面での大きな支援材料となる。

 この他に年間スケジュールで見た主要なイベントとしては、1月の新株価指数「JPX日経インデックス400」算出開始、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、2月の米FRBイエレン議長就任、ロシア・ソチ冬季五輪、東京都知事選挙、3月の東証・大証デリバティブ市場統合、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会、中国・全国人民代表大会、6月のG8首脳会議、6月~7月のブラジル・サッカーW杯、11月の米中間選挙、G20首脳会議、12月の第20回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP20)などがあるだろう。

 また中期的なテーマとしては、20年東京夏季五輪やリニア中央新幹線など建設ビッグプロジェクト関連、新技術・成長戦略としてのロボット関連、iPS細胞・再生医療関連、新エネルギー関連、設備投資関連、規制改革・TPP(環太平洋経済連携協定)関連、市場拡大が続くEC(電子商取引)・ネット通販関連、観光関連、シルバービジネス関連などが引き続き注目されるだろう。1月召集の通常国会で成立の可能性があるカジノ関連もあらためて材料視されそうだ。

 日本株が長期的な上昇トレンドに入るためには、やはり日本経済再生に向けた成長戦略が欠かせない。過去の「モノづくり日本」の姿に囚われず、生産性向上やイノベーション喚起に向けた大胆な規制改革、企業の新陳代謝や産業構造の転換を促進する法整備、海外からの投資を呼び込むための環境整備など長期戦略の構築が必要だろう。そして「日本が変わるかもしれない」と期待して資金流入が続く外国人投資家頼みではなく、日本の投資家が日本株に対する自信を取り戻すかどうかも重要なポイントである。(ジャーナリスト&アナリスト)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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