アベノミクスが掲げる「人活」は2014年に花開くか

2014年1月1日 10:15

 矢野経済研究所が2013年10月に発表した「人材ビジネス市場に関する調査結果2013」をみると、人材ビジネス市場に早くも景気向上のムードが漂い始めていることが良く分かる。同調査は、13年7月~9月にオフィスワークを中心とした人材派遣事業者、ホワイトカラー職種の人材紹介事業者、再就職支援事業者などを対象に行われたもので、人材ビジネス市場の中でも、人材派遣業、人材紹介業、再就職支援業の主要3分野について分析している。

 同調査によると、2012年度の人材派遣業市場規模は、前年度比95.4パーセントの3兆3,400億円と、4年連続の縮小にある一方で、人材紹介業市場規模は前年度比109.5パーセントの1,150億円と、3年連続の拡大傾向にある。さらに再就職支援業市場規模も前年度比114.8パーセントの310億円と大幅に拡大しているのだ。この結果を受け、同社では景気の回復傾向に伴って企業の人材需要が増大しているうえに、改正労働者派遣法の施行によって、人材派遣から業務請負や直接雇用への移行が進んでいると分析している。確かに、完全失業率をみても、安倍政権発足当初は4.3パーセントだったのに対し、わずか半年後の6月の時点で3.9%と0.4ポイントも改善していた。この背景には円安の影響が大きいとみられ、自動車をはじめとする製造業では、6月の新規求人数が13ヶ月振りに前年同月を上回っている。

 安倍政権では、「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」の三本の矢を柱とする経済政策、いわゆるアベノミクスの一環として6月に「日本再興戦略」を発表し、雇用制度改革・人材力強化の第1項に「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」を掲げている。経済産業省ではこれを受けて、能力開発支援も含めた労働移動支援「多様な「人活」支援サービス」を開始し、スキルと経験をもつ人が成長分野で活躍し、更なる価値創造を図る手助けを行っている。

 具体的には、「多様な「人活」支援サービス創出事業」を実施する委託先を、企画競争により募集し、株式会社パソナ<2168>、テンプホールディングス<2181>傘下のインテリジェンス、株式会社walkntalk など8業者を採択し、スキルと経験をもつ社会人に対し、再教育からマッチングまでを支援するサービスを提供することを条件に補助金を出す。年代としては、35歳から65歳を目安に優秀な人材の転職支援を行っていくという。

 例えば、パソナでは「グローバル展開企業×ミドルイノベーター マッチアッププロジェクト」として、海外ビジネスでグローバルな展開を目指す企業に対し、海外ビジネス関連業務について豊富なスキルや経験、ネットワークを持つミドル・シニア人材をマッチングし、プロジェクトの推進を後押しするとしている。

 日本のビジネスシーンではこれまで、転職に対するイメージはネガティブなものが大きかった。「会社に骨を埋める」的思考が美徳とされてきたからである。社蓄などと揶揄する言葉もあるように、せっかくの能力が活かされない状況では、本人はもとより、企業や社会の成長の為にもならない。ましてや、今の日本は産業構造の転換が重要な課題となっており、経済成長や雇用の確保を図りつつこれに対応するためには、優秀な人材の掘り起しが不可欠になってくる。

 しかしながら、転職する側も勇気が必要だ。景気が上向きつつあるといわれていても、まだまだ不安定な要素が見え隠れしている世の中の状況では、安定した生活を易々と捨てられるものではない。転職した人材の成功事例が増え、成長産業の人材ニーズを的確に把握することが出来れば、能力を持つ人がもっと活躍できる場が拓けるのかもしれない。アベノミクスが掲げる「人活」が効果を発揮して日本経済再興の力となるには、国民的な意識改革が必要かもしれない。(編集担当:藤原伊織)

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