問われ続ける、東電の危機管理意識
2013年12月29日 19:47
2011年3月11日、マグニチュード9の巨大な地震に伴い発生した高さ13mにも及ぶ大津波により、福島第1原子力発電所は、長時間にわたって全交流電源、直通電源が同時に喪失、そして原子炉の冷却機能喪失により、原子炉建屋の爆発、そして放射能物質の大気放出、海洋放出といった重大な事故を引き起こすこととなった。あれから2年と9ヶ月あまり。東京電力<9501>は、今もなお避難を続けている住民の一日でも早い帰郷と、そして汚染地域の除去作業の完了を目指しているものの、まだそのめどは立っていない。
そんな中、今年の6月には福島第1原発のタンクから水漏れが発生し、いわゆる「汚染水問題」が発生した。東京電力は観測用井戸から高濃度放射性物質の検出を確認していたものの、しかしその後、2週間以上にわたってその事実を隠ぺいし、6月になってようやく原子力規制委員会に報告。その後も海洋への汚染水流出疑惑が言われていたにも関わらず、東京電力はそれを認めようとせず、その後7月下旬になってようやく海洋への流出の可能性を認めることとなった。
そしてさらに8月下旬になって、福島第1原発の貯蔵タンクから300トンもの高濃度放射能汚染水が海洋に流出した事実を認めた。こうした東京電力の対応には、多くの批判が寄せられることとなった。そしてコスト削減のために汚染水貯蔵タンクにゴム製パッキンを使用、漏えい検知装置の未設置、少人数の作業員による1000基以上のタンクのうち、20基のみチェックを行うなど、そのずさんな管理体制は「汚染水問題」を「人災」と言わしめることとなった。
その後10月にも作業員の人為的ミスによる汚染水漏れが発生し、これにより作業員6人に放射性物質が付着する事態となった。こうした相次ぐミスについて、原子力規制委委員会の田中俊一委員長から「バカげたようなミス」という表現が出て来る始末ともなった。
この「汚染水問題」はまだなお進行中の問題である。次の春で事故発生から3年の月日が経とうとしているが、東京電力のこうした危機管理意識の改善がみられないことには、避難住民、そして国民の信頼回復をはたすことは、難しいだろう。(編集担当:滝川幸平)