【アナリスト水田雅展の為替&相場展望】重要イベント通過、円安・株高の流れが強まる可能性、企業業績精査に伴う見直しの動きにも注目

2013年11月10日 13:57

【為替&相場展望】(11日~15日)

  来週(11月11日~15日)の株式・為替相場は、8日発表の米10月雇用統計の結果を受けて円安・株高の流れが強まりそうだ。市場のムードが好転して三角保ち合いから上放れの動きを強める可能性もあるだろう。

  海外の重要イベントを通過し、国内主要企業の9月中間決算発表もほぼ一巡したため来週はやや材料難となる。しかし米10月雇用統計が市場予想を大幅に上回る強い内容だったことを受けて、米国のテーパリング(量的緩和縮小)開始時期が早まるとの観測を強めている。したがって米長期金利が上昇してドル高・円安の動きが強まり、連れて株高の流れも強まるだろう。チャート面では三角保ち合い上放れの可能性もありそうだ。物色面では企業業績の精査に伴って、好業績にもかかわらず売り込まれた銘柄に対する見直しの動きが注目される。

  前週の重要イベントと市場の反応を振り返ると、6日発表のトヨタ自動車の業績見通し上方修正は市場予想に届かず、市場のムードを好転させるには至らなかった。そして7日の海外市場では為替が乱高下した。米13年7~9月期実質GDP(国内総生産)速報値が市場予想を大きく上回ったことを受けて、一旦は1ドル=99円台までドル高・円安方向に傾いたが、ECB(欧州中央銀行)理事会が予想外の利下げを決定したことや、米GDPの内容が数字ほど強くないのではとの懸念が強まり、一転して1ドル=97円台までドル安・円高方向に傾き、米国株も大幅下落に転じた。このため8日の日本株は軟調だった。

  しかし8日発表の米10月雇用統計で、非農業部門雇用者の増加数が市場予想を大きく上回ったことを受けて、米FRB(連邦準備制度理事会)のテーパリング開始時期が早まるとの観測が広がり、外国為替市場では1ドル=99円台までドル高・円安方向に傾いた。株式市場では米景気に対する安心感が広がり、ダウ工業株30種平均株価が大幅上昇して史上最高値を更新した。

  なお米13年7~9月期実質GDP速報値は年率換算で前期比2.8%成長だった。企業の在庫投資が全体を押し上げて12年7~9月期以来の高い伸びとなり、市場予想の1.9%成長を大幅に上回った。ただし個人消費などには先行き不透明感を指摘する見方も多いようだ。また米10月雇用統計では、失業率は7.3%となり9月に比べて0.1ポイント悪化したが、非農業部門雇用者数が20.4万人増加となり、市場予想の12万人程度増加を大きく上回った。8月分と9月分も上方修正された。

  ECB理事会では政策金利を0.25%引き下げて年0.25%とすることを決定した。13年5月以来の利下げで過去最低の金利水準となる。さらにドラギECB総裁が記者会見で追加緩和を示唆したため、ユーロの低金利政策の長期化観測を強めている。中国に関しては、9日発表の10月消費者物価指数(CPI)が前年同月比3.2%上昇と8カ月ぶりの高水準となった。食品価格の上昇が全体を押し上げた。社会不安増大を押さえるためにも物価安定を図る必要があり、金融引き締め観測が強まる可能性があるだろう。

  前週末8日の米国市場の動きを受けて、来週初11日の日本市場も円安・株高の流れでスタートしそうだ。その後も外国為替市場で、ドルが買われて円とユーロが売られる流れになれば、円安・株高の好循環の流れを強める可能性が高いだろう。

  ただし、米国・ユーロ・中国の金融政策に対する思惑の交錯に加えて、米長期金利が急速に上昇すれば、米国株が調整局面に入る可能性が高まるという警戒感もくすぶることに注意しておきたい。もちろん14年1月15日期限の暫定予算問題、14年2月7日期限の連邦政府債務上限引き上げ問題も控えている。

  需給面で見れば、高水準の裁定買い残高や信用買い残高、5日に実施された空売り規制の緩和など、引き続き売り圧力が強い状況だ。そして年内の証券優遇税制廃止に向けた利益確定売りも本格化しそうだ。売買代金が膨らんで売り圧力を吸収できるかも焦点だろう。

 物色面では、9月中間期決算発表後の企業業績の精査に伴い、好業績見通しを発表したにもかかわらず市場予想に届かなかったとして売り込まれた銘柄に対する見直しの動きに注目したい。ドル高・円安方向に傾けば、輸出関連企業にとって通期上振れ余地が広がることになる。

  その他の注目スケジュールとしては、9日~12日の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)、11日の日本9月経常収支、日本10月景気ウォッチャー調査、EU財務相理事会、12日の日本9月第3次産業活動指数、日本10月マネーストック、日本10月消費動向調査、インドネシア中銀理事会、米9月シカゴ連銀全米活動指数、13日の日本9月機械受注、日本10月企業物価、ユーロ圏9月鉱工業生産、14日の日本7~9月期GDP1次速報値、ユーロ圏7~9月期GDP速報値、ユーロ圏財務相会合、米9月貿易収支、15日のEU財務相理事会、米10月鉱工業生産、米11月ニューヨーク州製造業業況指数などがあるだろう。

  その後は11月18日のユーロ圏9月経常収支、ユーロ圏10月貿易収支、20日の日本10月貿易統計、米10月小売売上高、21日の日銀金融政策決定会合、米FOMC(連邦公開市場委員会)10月29日開催分議事録公表、12月17日~18日の米FOMCなどが予定されている。(ジャーナリスト&アナリスト水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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