成長するタッチパネル市場と白物家電への展望
2013年10月19日 21:12
スマートフォンやタブレットなどの端末の普及によって、タッチパネルは急速に我々の身近なものとなった。富士経済の調査によると、2012年のタッチパネルの世界市場は前年比46.5パーセント増の11億2395万枚と、大幅に躍進していることからも、その成長ぶりが顕著にみられる。
タッチパネルの利点としては、接触による摩耗がなく、ボタン式に比べて耐久性に優れていることが大きい。また、埃や水などの侵入経路がないので、活用できる場面も幅広い。そして何と言っても、筐体が小型でスマートになり、デザインの自由度が上がるという点も人気の理由のひとつだろう。
そして今、新たなタッチパネルの市場として、スマートフォンやタブレットなどのIT機器だけに留まらず、OA機器やIHクッキングヒーターなどの白物家電への導入にも期待が高まっている。
一言にタッチパネルといっても、その検出方法には様々な方式があり、現在の主流は、抵抗膜方式や静電容量方式と呼ばれるもので、それぞれに長所と短所がある。
ハードウェアが安価で技術的にも複雑ではなく、消費電力の少ない抵抗膜方式は多くのタッチパネルに使われている、もっともポピュラーな技術ではあるが、高温・多湿にやや弱く、耐久性に劣るため、キッチンなどの環境には向かない。また、米Apple社のiPhoneなどで採用されたことで一気に認知が高まった静電容量方式は、表面膜の電気容量の変化を感知して座標を計算するもので、抵抗膜方式に比べて応答速度が速く、高分解能を有し、埃や水にも強いという利点はあるものの、周辺ノイズに弱いという弱点もあるので、こちらもやはり一般の白物家電への導入には難しいものだった。
もちろん、この点については製造者側も十分に把握しており、回路部やシールド面の強化を施したり、ノイズキャンセル用コアを使用したりするなどの対策を講じて、ノイズ耐性の強い製品の開発も進んでいる。
たとえば、ローム<6963>が先日発表したコントローラーIC(BU21079F)を用いたタッチスイッチ(タッチスイッチはON/OFF機能に特化したもの)では、同社独自の高感度容量検出AFEにより、高ノイズ耐性を実現しており、一般製品の約2倍となる1mの長距離配線も可能となっている。IC基盤とスイッチ電極が離れていても問題がないため、大型家電など、これまでタッチパネルの実装実現が困難とされていた機器にも、配線長を考慮せずに実装できるという。
さらに、同製品では、感度においても15mm厚のオーバーレイ(アクリルなどのカバー)まで使用できる高感度検出が可能となっており、白物家電にありがちな、厚みのある丸型や曲面のパネルにも容易に導入できる。
静電容量方式の市場は年々伸びており、富士経済の予測でも2017年のタッチパネル世界市場における静電容量式の構成比は95.1パーセントに上るとみられ、これからも成長が期待される分野であるが、スマートフォンやタブレットなどのIT機器だけでは頭打ちの感も否めない。今後は、あらゆる機器や場面に対応し得る技術力がシェアを決定づける傾向にあるといえるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)