不正ダウンロード「厳罰化」でもCDは売れない
2013年10月13日 19:57
昨年10月に、音楽などを無許可でダウンロードした場合に刑事罰が科される「改正著作権法」が施行されてから1年が経った。だが同法律の影響でCDや音楽配信の売上が増えると見込んだ音楽業界の思惑は、外れてしまったようだ。
NHKが9月29日に報じたところによると、同法律の効果で、ファイルを違法に交換し合うソフト「Winny」や「Share」を利用するパソコンの台数は昨年より4割近く減った。だがCDや音楽配信の売り上げは、ほぼ回復しなかったことが明らかになった。
不正ダウンロードによって「大きな損害が出ている」とされたCDやDVDなどの売上は、厳罰化後の昨年10月から今年6月までの半年間は、前年同期比で5%増えた。昨年1年間のデータを見ても、音楽CDの枚数や金額は、14年ぶりに前年を上回った(日本レコード協会調べ)。
だが昨年CDが好調だったのは、山下達郎や松任谷由実、桑田佳祐、EXILE、Mr.Childrenなど大物アーティストのベスト盤や、アイドルの握手券付きのCDの売上が好調だったためで、不正ダウンロード厳罰化の影響とはいえない。実際、2013年に入ってからの最新データでは、昨年売れたベスト盤の反動からか、CDやDVDの売上は前年比7%の減少となっている。
「有料音楽配信」も増えなかった。2000年代の後半には「着うた」「着うたフル」などの流行により、消費者は今後、CDから音楽配信へ流れるという見方もあった。だが有料配信の売上は2010年から、早くも減少に転じ始めている。2012年の「有料音楽配信」(モバイル、インターネットダウンロード合計)は約553億円となり、前年比マイナス24.5%と大幅に減少。スマートフォンの普及によって「着うた」の需要が減少し、無料動画サイトの利用が拡大したことも影響しているだろう。
今や若者を中心に「音楽や映像はタダで視聴するのが当たり前」という意識が広がりつつある。アーティストが「良い音楽」を作っても「聴かれるが売れない」時代になったのである。レコード会社にとっては厳しい状況が続く。(編集担当:北条かや)