除染も国費 それでも破たん処理せず
2013年10月12日 13:14
自民党の原発事故被害者支援・事故収束委員会が11日までに東京電力福島第一原発事故に対する新たな提言案をまとめた。除染費用について全額を東電に負わせる除染特別措置法を見直し、国費投入を可能にすることも盛り込まれた。
『国が前面に出る』とは国民の税金で東電を救うことかと疑う。事故による被害者救済措置や事故収束のための対処を迅速、的確に促進するために『国が前面に出る』ことを国民は支持している。当然に東電が負うべき債務を国民が背負うことを是としている訳ではない。
除染は東電福島第一原発事故から早期復旧を図るための初期活動であり、加速化するために、福島県内では国直轄などで行っているが、費用は東電に対して国が将来、支払いを求めることになっている。国が肩代わりしているに過ぎない。肩代わりしなければ除染がすすみそうにないからだ。
東電は汚染水問題でも積極的対応が遅れ、深刻さが増すなかで、菅義偉官房長官に「東電の対応は継ぎ接(は)ぎ。東電に任せておけない」と言わしめた。閣僚のひとりは「汚染水問題は国家的危機。東電の責任云々より、危機を収めることが第一」と追求を後回しにする発言。そうではなく、責任問題は同時にすべき案件だ。
結局、『東電に任せておけない』状況になり、汚染水問題は『国の責任で国が(税金で)対処する』ことになった。除染費用までが、新たに「国が前面に出て」行うような動きになっている。最終どうなるのか、国会で慎重に議論し、国民のだれもが納得のいく理由と結論を見出していただきたいと願う。
あわせて、その前にすべきことが先延ばしにされている。臨時国会で徹底議論すべき。国費投入なら、当然すべき議論だ。それは、東電に資金提供し続けている金融機関の責任と株主として配当を受けてきた株主責任だ。これが放置されたままになっている。国会議員からも提案のある『東電の破たん処理』を真剣に検討すべきだ。
自民党の河野太郎衆議院議員は『東電を破綻処理すべき』とするひとりで、原発問題や原子力エネルギー問題に精力的に取り組んでいるひとりだ。脱原発、原発ゼロを明確に表明する野党議員ではない。にもかかわらず、「東電は破たん処理すべき」と明言し、「東電は、やれと言われればできることを自らはやらない。理屈を並べ挙げて、なるべく人手とコストをかけずに対応しようとしている」と体質に言及している。
本来、こうした議員が原子力問題調査特別委員会に入るべきだろうに、この国会に配属なった委員会は外務委員会、憲法審査会、決算行政監視委員会だそうだ。河野議員は決算行政監視委員会と原子力問題調査特別委員会への配属を希望していたそうだが、自民党の国対委員長は普段の原子力行政への河野議員の言行を評価されなかったのだろうか。煙たく思ったのか、河野議員が原子力問題調査特別委員会に配属されなかったことを国民のひとりとして、わたしは残念に思っている。
9月7日付け記事で、筆者は東電への国費投入問題のたびに、東電の株主と貸し手責任の問題を明確にすべきだと提起してきた。国際問題だから税負担で早期解決という論理は許されるべきでない。全額を立替たとしても、立替は立替であり、筋を通すべきだ。
また、東電自身の一層のコスト削減も国民の理解を得るためには必要だ。9月7日記事で申し上げたが、事実上の破綻企業が一般大手企業の平均値より高い人件費であることが容認されていること事態、異常といわなければならない。税金投入で生き続ける企業としての国民への責任感や「現在も毎時1000万ベクレルの(大気への)追加的放出がある」(廣瀬直己社長)事実、海洋への放射性物質の放出について「地下水の汚染などにより、最大で1日あたり最大200億ベクレルのセシウムが放出されているとみている」(同)という状況。国際社会への責任を企業としてどう受け止め、対応するのか。東電のけじめ、政治のけじめが問われている。(編集担当:森高龍二)