「燃料電池」の課題をクリアした最先端の「燃料電池」、その実力とは

2013年10月5日 21:06

 燃料電池(Fuel Cell)という概念は、かなり一般的に認識されるようになった。燃料電池では、水を電気分解すると酸素と水素が生成されるが、この逆の発想で「水素を酸素と反応させることで電気を作る」装置が燃料電池だ。言ってみれば「水素の発電機」である。そして、その燃料電池が排出するのは基本的に「水」だけ。環境汚染物質を出さないのが最大の特徴だ。

 これまで、世界の自動車メーカーは「燃料電池自動車」開発に競って莫大な投資を行っている。これは、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)に次ぐ、将来のエコカーとして期待されているからだ。

 しかし、燃料電池に欠かせない水素は化学反応しやすく分子が小さいため、ふつうのガスボンベなどの貯蔵タンクに入れても金属をすり抜けて外に逃げてしまう。そのため高圧タンクや水素を吸着する素材の研究が進められている。

 また、水素ガスの燃焼により得られるエネルギーはガソリンなどに比べると小さいため、自動車などに利用する場合にはガス状のままで持ち運びするには効率が悪い。そこで、冷却した液体水素として搭載する必要があった。

 しかし、10月1日から千葉・幕張メッセで開催された「CEATEC」で発表された、半導体メーカーのロームとアクアフェアリーが開発した燃料電池は水素源(水素発生元の素材)が固形。だからボンベやタンクは要らない。独自の技術でカルシウム・ハイドライド(水素化カルシウム)の粉末を樹脂でシート状に固形化したことがポイントだ。このシートに加水することで水素が発生する。また、水素の発生は電気使用量に応じて抑制するので無駄がなく、樹脂で水素の発生量を制御されており非常に安全である。加えて、ユニットそのものが非常にコンパクトだ。

 今回は同社が以前発表したプロトタイプに比べて洗練されたデザインが特徴で、メインとなるのは、今年から災害対策用非常電源として地方自治体にて実証実験を行うハイブリッドタイプ。これは、非常電源として有力視されていて、水素源カートリッジはカセットコンロのボンベのような形状。これ1本で一般的なLED照明(10W)を20時間使えるという。もうひとつが携帯端末などに対応する小型タイプ。カートリッジ1個でスマートホンをフル充電できる能力を持つ。CEATEC AWARDでグランプリを受賞するなど、その技術は折り紙つきといえる。燃料電池(Fuel Cell)を身近で使う環境が整い始めた。(編集担当:吉田恒)

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