東レ、米炭素繊維メーカーのゾルテックを約580億円で買収
2013年9月27日 14:04
東レは27日、米国のラージトウ炭素繊維メーカーのZoltek Companies, Inc.(ゾルテック)との間で、同社の全株式を1株あたり16.75ドル、総額約5億8400万ドル(約580億円)で取得し、同社を買収することに合意したと発表した。
炭素繊維の世界需要は、軽量化による省エネルギーだけでなく、石油・石炭代替エネルギーの普及に貢献する素材として、今後も年率15%以上の成長が期待されている。航空機用途に代表される高機能・高品質を要求する用途ではレギュラートウ炭素繊維の適用が拡大する一方で、近年急速に需要が拡大している風力発電関連用途や今後の拡大が期待される自動車構造体用途では、コストと性能のバランスからラージトウ炭素繊維の採用拡大が見込まれており、今後はレギュラートウとラージトウそれぞれの特徴を活かした需要が形成されていくものと予想されている。
ゾルテックは1988年にラージトウ炭素繊維事業に参入し、1996年にハンガリー、2007年にメキシコのアクリル繊維工場を買収して、ラージトウ炭素繊維の需要開拓を進めてきた。レギュラートウ炭素繊維メーカーとは一線を画すマーケティング戦略を推し進め、徹底的にコスト競争力を強化することで、近年では風力発電関連用途需要の伸張に伴って事業・業績を大きく拡大している。
東レはこれまで、高機能・高品質レギュラートウ炭素繊維に経営資源を集中することで、ボーイング787向けをはじめとする航空機や天然ガス圧力容器などの先端分野で強みを発揮してきたが、ラージトウ炭素繊維の品揃えがなく、風力発電関連用途や自動車構造体用途等のより汎用性の高い産業分野の成長を取り込むことが課題となっていた。東レは、今回のゾルテック買収により、レギュラートウ炭素繊維とは全く異なる分野での事業展開が可能となり、新たな成長の機会を得ることになる。
東レは、炭素繊維複合材料事業を戦略的拡大事業と位置づけ、積極的な経営資源の投入による事業拡大を進めている。新たにラージトウ炭素繊維事業に参入することにより、幅広い分野で地球環境問題にソリューションをもたらす先端素材としてより一層の事業拡大を目指す。