来週は波乱の展開も、日経平均は5営業日で約1000円高、『オリンピック』は先食い=犬丸正寛の相場展望

2013年9月6日 17:15

 来週(9~13日)は、この週末に明らかとなる、『アメリカの雇用統計』と『オリンピック開催地決定』という2つの大きい材料に加えて、アメリカのシリア攻撃という気になる材料を受けての展開となる。波乱を含んだ週となりそうだ。

 アメリカの雇用統計は、順調な景気が続いていることからみて引き続き明るい数字が予想される。7月までの過去3ヶ月間の月平均では約17.5万人の新規就業者増加となっている。発表となる8月分は、この平均値を2割も上回ったり、下回ったりするような数字にはならないものとみられる。

 このため、アメリカの量的金融緩和縮小は予定通り、遠からず実施される方向にあるものとみられる。ただ、マーケットでは、(1)米・10年国債金利が2.98%と3%へ接近、(2)NYダウも8月2日の高値1万5658ドルから約6%(約1000ドル)下げている、など量的金融緩和縮小はそうとう織り込んでいるといえる。今後、量的金融緩和縮小が発表実施となれば材料出尽しとなる可能性はあるだろう。

 一方、東京オリンピック開催については、マーケットはかなり先食いしている。たとえば、日経平均は直近の安値である8月28日の1万3188円から9月5日の1万4156円まで、わずか5営業日で約1000円も上昇した。この間、為替が円安に振れたということもあるが、上げ幅の大部分はオリンピック東京開催決定を期待し買ったものといえる。

 したがって、仮に、東京に決まったとしても先食いしているだけに、さらにここから1000円高となるような上値追いにはならないだろう。上伸する場面があったとしても、「上ヒゲ」チャートとなる可能性がある。逆に、東京が落選すれば上げ幅の半分に当る500円安の調整安となる可能性を含んでいると見ておきたい。

 さらに、気になるのはアメリカのシリア攻撃の有無である。アメリカは振り上げた拳をやや下げた格好となっているものの、自由平等、正義とルールを重視するアメリカは化学兵器を用いたとするシリアを見過ごすことはできないだろう。攻撃となった場合、ミサイルによる短期限定とは言うものの、アメリカの同盟国であるイスラエルへのシリアの報復攻撃も予想されているし、イランあたりへ戦線が拡大しないともいえない。周辺には原油パイプラインが多いだけに破壊されると原油価格高騰の心配はある。

 ただ、国際緊張が高まれば安全資産としてアメリカ国債へ資金が向かう可能性もあり国債価格上昇(金利低下)の可能性もあるだろう。ドル高・円安ということも予想され日本のマーケットには手がかりとなるだろう。

 このように9月は月初から波乱を含んだ展開が予想される。過去のデータでも9月は荒れ模様となっている。日経平均は1992年~2012年の過去21年における、『9月の月足』チャートは、21回中で14本が陰線(月初に比べ月末が安い)となっている。上半期最後の月ということで機関投資家、法人等の売りも出やすいこともある。実際、9月3日、4日と久々に20億株を越える出来高となったことは、法人等の売りが出た可能性もあるようだ、と指摘されている。

 今年の9月は、日経平均が月初1万3438円と比較的高い位置からのスタートとなっているため、可能性としては9月の月足チャートは陽線より陰線が出やすくなっている。しかも、今年の9月は月初が2日の月曜日で始まる『2日新甫』となっており、荒れる月に当っていることも気になる。

 こういったことから9月はこれまでにも増して短期売買が中心の素早い対応が求められる。ただ、一方で3~6ヵ月ていどを目処とした中期投資の向きには、9月の『彼岸買い』は、過去のデータでも好パフォーマンスとなっていることから、月末に向け安くなるところがあれば好買い場といえるだろう。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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