自動車大国日本、復権のカギを握る自動運転技術

2013年8月31日 18:08

 今、自動車業界は次世代の自動車として、自動運転の実現に向けた動きがにわかに活発になってきている。日本でも、政府の成長戦略の中に自動走行システムの実現が盛り込まれており、国土交通省では、2015年を目処に高速道路での同一車線走行技術を確立、2020年代初頭に高速道路での自動運転の実現を目指し、2012年6月から検討会を行ってきた。そして、今年8月5日には高速道路に於ける自動走行実現に向けた工程表骨子をまとめたと発表した。

 省レベルで本格的な検討を行うのは世界でもこれまでに例がない。

 そんな中、日産自動車<7201>が8月27日、米カリフォルニア州で開催したイベント「日産360」の席上で、2020年までに同社の複数の車種において自動運転を実用化することを発表し、注目が集まっている。自動運転車の開発はこれまで、トヨタ<7203>や米GM社、ドイツのアウディなどの自動車メーカーが実用化に向けての研究開発を進めてきた。とくにトヨタは、今年1月にアメリカの公道でGPSを組み込んだレクサスを走らせる実験を行って話題になっていた。

 また、自動車メーカーだけでなく、IT大手のグーグルも参入を表明しており、17年までの実用化を視野に入れた公道実験を進めている。しかし、これらはまだ開発段階であり、実際に自動運転車を商品化する方針を表明したのは、今回の日産が世界初となる。

 日産は、東京大学をはじめ、スタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学、オックスフォード大学、などと共同で研究を行ってきた。今回のイベントでは、同社の電気自動車「リーフ」をベースにしたモデルが公開されたが、2020年までに複数モデルにこの技術を採用して販売を開始し、10~12年以内には同社の車種全般に自走技術を普及させる計画を明らかにしており、法規制が整備された国から順次売り込みを開始していく。

 さらに価格面でも、現行の販売車両と比べても高額になるようなことはなく、お手頃な価格を実現するという。ちなみに同社では、ラグジュアリーセダンを自走車にアップグレードするコストを1000ドル、日本円にして約9万8000円程度と試算している。

 これが実現すれば、日産は世界で初めて、自動運転の車を発売した自動車メーカーという名誉と、莫大なメリットを手に入れることになるだろう。また、国土交通省も今年10月に開かれるITS(高度道路交通システム)世界会議で、検討会の成果を公表することを目指している。

 日本が世界に先駆けて実用化を実現できれば、世界の市場に対するアピールとアドバンテージは計り知れない。自動車大国日本の復権はもとより、日本経済全体にとっても大きな利益をもたらすことになるだろう。(編集担当:藤原伊織)

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