厚労省が推進する「医薬分業」って何?
2013年8月27日 20:04
2010年の国民医療費は、過去最高の37.8兆円となった。増え続ける医療費を何とかしようと、厚労省が「ジェネリック医薬品の普及」とともに推進してきたのが「医薬分業」だ。
「医薬分業」とは簡単にいえば、病院が一括して診察から薬の処方までを行なっていたのを「診察は医師・薬の調剤と処方は薬剤師」に分けること。患者にとっては、診察後に処方箋を受け取り、薬局へ行く手間が増えることになる。面倒に感じる人も多いかもしれないが、「医薬分業」は医療費を減らす上で重要な施策なのだ。
たとえば2012年4には処方箋の仕組みが変わり、ジェネリック薬への変更に際して薬剤師の裁量が大きくなった。これも「医薬分業」による医療費削減の一環だ。薬剤師が患者に対して積極的にジェネリック医薬品を勧めれば、薬価の削減につながるからだ。
さらに病院側にとっては、薬の購入費を減らすことができ、調剤に関する負担も減って人件費を削減できるようになる。患者は「かかりつけ薬局」の薬剤師に相談することで、複数の病院からもらった薬の飲み合わせによる副作用を防ぐこともでき、その分の医療費も減らせる。
医薬分業はまさに、医療費削減のカギを握っているように思われる。だがこのままの勢いで高齢化が進めば、医療費は増え続けて「焼け石に水」だろう。そこで厚労省は将来、さらに積極的な施策を行うかもしれない。
ひとつには徹底して医薬分業を推し進め、「診療費」すら減らそうとすることだ。厚労省は現在、入院費用を減らすために通院治療への切り替えを進めているが、その診療報酬もかなりの負担になっている。
そこで近い将来、たとえば慢性疾患で同じ薬を飲み続けている患者などに対しては、医師が毎回は診察をせず、処方箋だけを出す仕組みへと変わるかもしれない。診察を受けなかった患者は、処方箋料だけ負担する。そして薬の飲み方のチェックなどについては薬剤師が行うようになる。そうすれば国は、医療機関から請求される莫大な診療費を削減できるだろう。
まさかそんな乱暴な、と思うかもしれない。診療報酬が減れば、赤字経営に陥る病院がさらに増えることも予想される。しかし現に厚労省は「セルフメディケーション」を進めており、過剰な診療を減らそうとしている。2011年にはそれまで医師の処方箋がなくては買えなかったロキソニンが、「ロキソニンS」として薬局やドラッグストアで買えるようになった。
このまま厚労省が医療費の削減を進めれば、近い将来、患者にとって「かかりつけ医」ならぬ「かかりつけ薬局、薬剤師」がさらに重要になる時代が来るかもしれない。(編集担当:北条かや)