干上がる新興国、米緩和縮小という“追証”におびえ

2013年8月23日 11:07


*11:07JST 干上がる新興国、米緩和縮小という“追証”におびえ
米連邦準備理事会(FRB)が早ければ今年9月から量的緩和の縮小を開始するとの観測が強まっています。これが新興国の金融市場を混乱させ、株式、為替、債券のトリプル安があちこちで観察されています。

最も注目を浴びたのがインドの通貨ルピーで、対ドルでは今週だけで約5%急落しました。また、東南アジアの通貨も軒並み売られ、中でもインドネシア・ルピアは同期間中に4.3%、タイ・バーツは2.4%の下落となりました。

経常赤字国であるインドとインドネシアは特に外国資本が流出しやすく、例えば経常黒字国である韓国の通貨ウォンは対米ドルで0.8%の下落にとどまっています。

また、経済成長鈍化という要因も通貨売りの対象として狙われやすく、タイでは4-6月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)が前期比0.3%減少。1-3月期も1.7%のマイナス成長でしたので、同国が予想外のリセッション(景気後退)に突入したことになります。

そして、通貨売りの次のターゲットになりそうなのがマレーシア。同国の中央銀行はこのほど、2013年のGDP成長率見通しを従来の5.0-6.0%から4.5-5.0%に下方修正しました。今年4-6月期の実質GDP成長率が前年同期比4.3%となり、市場予想の4.7%を下回ったことを受けたものです。

マレーシアの通貨リンギは今週、対米ドルで1.0%下落しましたが、これは同国が経常黒字国のため下値が限定的になっているようです。ただ、経常黒字は縮小傾向にあり、特に同国の特産物とも言えるパーム油の輸出が中国とインドの景気低迷で落ち込んでいます。

さて、ここで大和キャピタル・マーケッツが発表した興味深い分析を紹介します。FRBのマネタリーベースは2008年8月から2013年3月までに2兆3000億米ドル拡大。同期間に日本を除くアジアの外貨準備高が2兆2000億米ドル増加したことを考慮すると、経常収支と資本収支の両面で膨大な資金がアジア流入したことがわかります。

こうした大量の資金流入は大幅な通貨高につながったはずでしたが、アジアの中央銀行は通貨安定を図るためマネタリーベースを2兆7000億米ドル拡大させることを許容。つまり、この額の紙幣を印刷して通貨高を回避したことになり、アジアは必要のない時期に独自の量的緩和を実施したと大和は指摘しています。

また、このマネタリーベースの拡大が企業や個人の過度のレバレッジにつながり、アジアに流入した資金の大半がレバレッジの掛けられた資金だったことは間違いありません。こうした状況について、大和はFRBによる量的緩和の縮小・終了がアジアにとってのマージンコール(追証)のようなものになると描写しました。《RS》

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