ソニー、FeliCaカードを利用した電子お薬手帳サービスを提案
2013年8月20日 13:35
ソニーは19日、クラウド上で個人情報に配慮したデータの蓄積を可能とするシステムを新たに開発したと発表した。その最初のアプリケーションとして、交通システムや各種電子マネーで広く普及している非接触ICカード技術「FeliCa(フェリカ)」のカードを利用した電子お薬手帳の試験サービスを、2013年秋より川崎市にて開始する。
従来のクラウドを利用した一般的なサービスでは、利用者の個人情報とデータの両方がペアで同じクラウド上のサーバーに保存されるため、万一外部または内部からシステムへの侵入があった場合、これらの情報が同時に漏えいするリスクがあった。これに対して今回ソニーが新たに開発したシステムは、個人情報とデータを分離し、データのみをクラウドに保存する。このため、仮にクラウド上のデータへ不正アクセスがあったとしても個人情報が守られる構造を実現している。ソニーはこの仕組みを利用した最初のアプリケーションとして電子お薬手帳を提案する。
医師が処方した薬の名称や量、服用回数、飲み方などの調剤情報を記録するお薬手帳は、複数の医療機関で薬が処方された場合でも医師や薬剤師が薬の重複や不適切な飲み合わせがないか等の確認を行うのに役立つもので、現在は主に紙の手帳が利用されている。紙の手帳は薬局から受け取る調剤情報シールを貼り付けたり、自分でメモを書き込めたりする手軽さがある一方で、薬局への携行を忘れてしまった場合や手帳自体を紛失した場合等、調剤履歴を継続的に蓄積、管理するのが難しいという一面もある。
ソニーは、個人の調剤履歴の記録や管理向けに、FeliCaカードを利用した電子お薬手帳とスマートフォン用アプリケーションを開発した。利用者は、FeliCaチップが埋め込まれたカードを薬局の端末にかざすだけの簡単な操作で調剤履歴の閲覧と調剤情報の記録を行うことができる。
さらに、スマートフォン用アプリケーションをインストールすればモバイル端末からも情報閲覧できるほか、診察を受けた際の症状や、服薬後の副作用、アレルギーなどの記録も可能。また、薬局は専用のソフトウェアをインストールしたパソコンおよびタブレット、並びにカードリーダー等を用意することでシステムを構築できる。
ソニーはこの新たなサービスの実証実験として、川崎市宮前区医師会および同市薬剤師会と協力して、五十嵐中特任助教(東京大学大学院薬学系研究科)監修の下、2011年11月より川崎市宮前区にある約20の薬局にシステムを提供してきた。各薬局が同システムを用いたサービスを提供し、現在までに約1,000人の利用者が実際に利用している。この実証実験を通して利用者や薬局から得た各種の要望やそれらを検討して蓄積した知見を活かし、2013年秋からは対象エリアを川崎市全域に拡大してソニー自ら試験サービスを展開していく。