三菱重工、ターボ生産1,000万台体制を構築へ
2013年8月18日 17:17
自動車のターボチャージャーというと、かつては小排気量車に大馬力を付与する手段というイメージが強く、低燃費がセールスポイントになるとは考えられたなかったが、今やターボチャージャーは、エコロジーの代名詞なのだ。
三菱重工<7011>は、燃費規制強化の広がりを背景とした、ターボチャージャー需要の世界的急増に対応すべくターボチャージャーの年間生産能力1,000万台体制構築に向け生産能力を増強する。その第一弾として、タイをはじめとする海外生産拠点に総額約110億円の投資を行い、2015年までに、年間生産能力を現状の580万台から890万台まで増強する。
開発、製造、営業面でも新たな施策を推進する。世界最高効率を達成する「新コンセプトターボチャージャー」や、ガソリンエンジンの一層のダウンサイジングに対応した「電動式の二段過給システム」などの次世代ターボチャージャーを開発し、新たな市場を開拓する。そのために、欧州の生産拠点である同社子会社、Mitsubishi Turbocharger and Engine Europe B.V.に、日本に次ぐ“第二の開発拠点”として役割を担わせ、顧客への開発サポートを充実させるという。
タイの生産拠点であるMitsubishi Turbocharger Asia Co. Ltd.には、今回の約110億円の大部分を占める設備投資を行い、ターボチャージャーの中核部品であるカートリッジ生産体制を強化する。また部品加工ラインやカートリッジ組立ラインを大幅に増設して、カートリッジの年間生産能力を15年までに現状の2.5倍強に増強する。タイに拠点を構える自動車・トラックメーカー向け完成品の需要も増大していることから、最終組立ラインも増設し、15年の生産能力を現状の2倍に増強する。
中国の生産・販売拠点である上海菱重増圧器有限公司(Shanghai MHI Turbocharger Co., Ltd.)は、同社と上海ディーゼル、住友商事<8053>の3社合弁会社だが、三菱重工が住友商事から株式の一部を購入し、6月に連結子会社化を完了している。これにより、年間生産能力を15年までに現状の約3倍に増強し、16年には約4倍に拡大する計画という。
米国では、エンジン・ターボチャージャーの販売を行う同社子会社、Mitsubishi Engine North America, Inc.の新工場としてインディアナ州にターボチャージャー生産拠点を新設予定で14年秋には量産を開始するという。自動車の北米大手や日系、欧州メーカーの北米拠点をターゲットに順次増強し、16年をめどに年間生産能力を120万台と発足時の2倍に引き上げていく計画だ。
ターボチャージャー市場は、米国のCAFE(企業平均燃費)規制に代表される燃費規制強化の広がりに伴い、ガソリン乗用車を中心としてターボチャージャー搭載エンジンの需要が急速に高まっている。(編集担当:久保田雄城)