【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】米ロ関係波乱がドル売りか、ドル買いか見所に

2013年8月11日 13:07

■日本のGDP発表が消費税決定の有力材料に

  来週(8月12日~16日)の株式・為替相場は、週初12日朝発表の日本4~6月期GDP1次速報値が注目材料となり、その後は消費増税実施の最終判断を巡る思惑が交錯しそうだ。お盆休暇で市場参加者が減少して薄商いになれば、先物主導で一段と乱高下する可能性もあるだろう。

  基本的には株高・円安方向の流れという見方が大勢の中、前週は想定以上に株安・円高の下降スパイラルが加速する展開となった。週末9日のオプションSQ(特別清算指数)に絡む動きもあったようだ。日経平均株価の9日の終値は1万3615円19銭となり、週間ベースで850円97銭(5.89%)下落、TOPIXは55.26ポイント(4.62%)下落した。為替は一時1ドル=95円台までドル安・円高方向に傾く場面があった。東証1部市場の売買代金も1日当たり2兆円前後とやや低水準であり、手控えムードを強めた形だ。

  こうした手控えムードの背景には、国内要因として来年4月実施予定の消費増税の最終判断に関して先送りを警戒する動きが強まったこと、参院選後の安定政権で進展するとされた大胆な規制改革に対する期待感が後退していることがありそうだ。海外要因としては、米国の量的緩和の縮小開始時期や縮小ペースについての思惑が交錯し、米FOMC(連邦公開市場委員会)メンバーの発言に敏感になっている。さらにバーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長の後任人事を巡る観測も交錯している。

  国内主要企業の13年4~6月期業績は、デジタルカメラが不振の精密セクターを除けば概ね市場予想水準で順調だったが、一方ではポジティサプライズが少なかったことに加えて、足元の円高修正一服で輸出企業の一段の増額修正を望みにくい状況であることも手控えムードにつながっている。

  また前週末9日の米国市場では、ダウ工業株30種平均株価が前日比72ドル81セント(0.47%)安と反落し、為替が1ドル=96円20銭台と東京市場に比べてやや円高方向に傾いて取引を終了した。ダウ工業株30種平均株価は8月2日の終値ベースでの史上最高値1万5658ドル36セントから自律調整の範囲だが、為替が円高方向に傾いたことが意識されるだろう。CMEの日経225先物(円建て9月限)の終値は1万3550円だった。

  このため週初12日の株式市場は売り優勢でのスタートとなりそうだ。ただし12日朝、取引開始前に発表される日本4~6月期GDP1次速報値次第では、市場のムードが変わる可能性もあるだろう。4~6月期GDP1次速報値が、市場予想以上に強い内容であれば予定どおり消費増税実施の観測が強まり株高・円安の上昇スパイラル、弱い内容であれば消費増税先送りの観測が強まり株安・円高の下降スパイラルが想定される。

  また為替に関しては、オバマ米大統領が9日の記者会見で「米ロ関係のあり方を再検討する時期に来た」と表明し、外交姿勢を見直す考え方を示唆したことの影響がドル売り、あるいは逆にドル買いにつながるのか、その影響に注意が必要かもしれない。

■日経平均は商い少ない中、先物主導で波乱も

  その後は引き続き、消費増税実施の最終判断に関する要人発言やメディアの報道を巡って思惑が交錯しそうだ。お盆休暇で市場参加者が減少し、全体として手控えムードを強める中、先物主導で乱高下する可能性もあるだろう。物色面では好業績・好材料・好需給銘柄の個別物色が中心になりそうだ。

  その他の注目スケジュールとしては12日の日本7月企業物価指数、日本7月鉱工業生産確報、13日の日本6月機械受注、独8月ZEW景気期待指数、ユーロ圏6月鉱工業生産、米7月小売売上高、米7月輸出入物価、14日のユーロ圏第2四半期GDP速報値、15日の米7月鉱工業生産、米8月ニューヨーク州製造業業況指数、米8月フィラデルフィア地区連銀業況指数、米8月住宅建設業者指数、16日のユーロ圏6月貿易収支・経常収支、米7月住宅着工件数、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。

 その後は19日の日本7月貿易統計、9月4日~5日の日銀金融政策決定会合などが予定されている(ジャーナリスト&アナリスト水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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