子育て世代に人気のネット生保
2013年7月28日 14:25
内閣府が2009年に発表した「インターネットによる子育て費用に関する調査報告書」によると、未就学児の一人当たりの年間子育て費用総額は1,043,535 円。未就学児のうち、未就園児では一人当たり843,225円。保育所・幼稚園児では約37万円多くなり、一人当たり1,216,547円。小学生は一人当たり1,153,541円とむしろ保育所・幼稚園児よりやや少なくなるが、中学生では約40万円多くなり一人当たり1,555,567円。未就学児の約1.5倍となっている。
また、国税庁が11年に行った民間給与実態統計調査の結果によると、子育て世代である30代前半(30歳~34歳)の平均年収は384万円、30代後半(35歳~39歳)は431万円となっており、児童手当や医療助成をはじめとする各自治体による子育て支援制度などはあるものの、年収の数字的な面で考えると、子育てはかなりハードルが高いことが分かる。
収入全体が上がることが理想ではあるものの、景気が不安定なこの情勢下では、大きな期待はもてない。そうなると当然、家計をいかに節約するかにかかっている。一般的な家計の支出割合は、住宅や車にかかる費用が約30~40パーセント、食費が20~25パーセント、そしてそれらに次ぐ出費が保険料の10~15パーセントとなっている。もしものときの家族の生活を考えると保険は必須だが、保険料の掛け金が毎月の家計を苦しめているのも事実だ。
そこで今、子育て世代の世帯を中心に注目を集めているのが、ライフネット生命<7157>だ。ライフネットという名称から、外資系の保険会社と思われることも多いようだが、実は日本で74年ぶりにゼロから立ち上がった生命保険会社で、しかも保険会社を親会社としない独立系としては戦後初の新規参入となる生命保険会社なのだ。
また、ライフネット生命は、60代のCEO出口治明氏と30代のCOO岩瀬大輔氏の、全く世代の異なる二人が、売上のない時期に、名だたる大企業やベンチャー・キャピタルからプレゼンのみで132億円という巨額の資金調達を成功させ、ビジネスを開始したことでも有名な企業だ。
キャッチーなテレビCMやPR、また保険業界ではタブーとされてきた手数料の内訳を全面公開するなど、「変わった保険会社」のイメージが強い同社だが、これには理由がある。ネット生命保険というビジネスモデル自体が、20~30代の子育て世代を対象としたもので、まずその世代に受け入れられることを目的としているのである。しかも、同社では若い人を応援する保険、若い人が元気の出る保険商品を出し続けるという理念の下、保険料を半額にすることを目標に展開を行っている。
実際「30歳男性の定期死亡保険、保障期間:10年、保険金額:3,000万円」という条件では、国内大手生保では軒並み月額7000円前後の掛け金が平均値であるのに対し、ライフネット生命では月額3,484円と半額近い掛け金に抑えられている。
また、掛け金だけではなく、初めて利用する人でもウェブサイトを一読するだけで理解できるように、生命保険にありがちな、複雑な仕組みの「特約」を捨て、「単品」のみを販売している。またウェブサイトに「生年月日」と「性別」を入力するだけで、わずか10秒もあれば見積もりができる手軽さも、若い世代にはとっつきやすい。
さらに、コンタクトセンターは平日の夜10時までつながることで、共働きの家庭や残業の多い家庭でも利用しやすくなっている。
その結果、2008年の創業以来、この不況下に右肩上がりで業績を伸ばし続けており、開業からわずか3年10カ月の12年3月に東証マザーズに上場、開業5周年で保有契約件数が18万件突破と破竹の躍進を見せている。ちなみに、ネット専業の生命保険会社としては史上初の上場であり、生保業界全体としても株式上場は第一生命<8750>に次いで2社目となる。
保険業界に限らず、ライフネット生命のように、社会情勢を上手く見据えてユーザーの生活に根ざした商品を提供することで、まだまだビジネスチャンスは残されているのだろう。(編集担当:藤原伊織)