部品メーカーの底力が日本の開発力を救う
2013年7月27日 20:36
スマートフォンの台頭は普及型のコンパクトデジタルカメラの頭打ち傾向を生んだ。代わって2009年以降、ミラーレス一眼レフが各社から続々と登場し、高品位・高画質なデジタルカメラとして急成長を果たした。2012年にはミラーレス機を含む日本メーカーのレンズ交換式デジタルカメラ全世界向け総出荷台数は、2015万7053台(前年比128.4%)、金額にして7531億6339万円(140.9%)となった。(「社団法人カメラ映像機器工業界」調べ)一方、同年のコンパクトデジカメ出荷台数は7798万2104台/実績(前年比78.1%)、金額で7149億5126万円/実績(77.9%)となり、金額ベースでは一眼レフ/ミラーレス機を含む高級機がコンデジを抜き去っている。今やデジカメ市場は完全に高品位・高機能化へシフトしているのだ。
さらに2013年に入ってからこの高品位・高機能へのシフトはさらに進み、ミラーレス機の販売にやや陰りが見えるなか、エントリークラスの一眼レフ(いわゆるミラーのあるレフレックス型)が好調に推移している。ミラーレスからミラー付き本格一眼へと、デジカメユーザーの高品位志向は止まらない。
デジカメで撮影をしようとして、デジタルカメラのオートフォーカス(AF)機能が「迷い出し」て、なかなか合焦せずにイライラしたことがないだろうか。ピント合わせでカメラが「迷う」理由には、被写体そのものがピントを合わせにくい無地だったり、撮影環境が暗いことなどが挙げられる。それらは幾つかのテクニックでカバーできるが、撮影環境の暗さによるピントの迷いを解消するのが「AF用補助光」の採用だ。
このAF用補助光に最適なサイドビュータイプLEDを開発し、業界をリードしてきたのが京都の半導体メーカーロームである。今回、同社は更なる小型化・性能アップを図ったLEDをリリースした。非球面レンズを採用した新製品は、CAE(Computer Aided Engineering:製品を実際に製造する前に、コンピューターにより事前にシミュレーションして調べる)技術で開発。面実装非球面レンズ付きLEDとしては業界最小クラスの2.9×2.4mmとなり、従来品よりも実装面積で65%減、高さで30%削減を達成した。また、小型ながら高出力化も実現しているため、従来品と同等輝度で設計する場合は省エネにもつながるという。さらに、光軸のズレも±3°に抑えており、高精度なAFが可能となった。
こうした画期的な製品により、一眼デジカメの高品位・高機能化はますます進みそうだ。部品レベルでの技術開発の底力こそが、日本のIT分野に限らず一般消費財メーカーの商品開発力を支えている。消費財メーカー間の新製品開発競争は、我々ユーザーにとって楽しみと利益こそあれ、不易はない。(編集担当:吉田恒)