納品期限を見直し、経済的ロスを防ぐ
2013年7月21日 17:56
スナック菓子やカップ麺などに表示される賞味期限。賞味期限は、美味しく食べることのできる期限であり、期限が過ぎても食べられなくなるわけではない。とはいえ、スーパーなどの小売店では、賞味期限の近づいた商品を値下げ販売することがあり、消費者も購入時の目安として利用している。この賞味期限は微生物検査や理化学検査を経て設定されることが多いが、統一された設定方法があるわけではなく、製造者側が自社基準により設定している。
現在、賞味期限がつけられた多くの食品が、3分の1ルールというものに従い流通している。通常、食品はメーカーで製造されてから卸売業者に渡り、その後小売業者にて店頭販売される。製造日から賞味期限までの期間を3等分して、期間ごとにメーカー、卸売業者、小売業者における返品や廃棄処分について定めたものがこのルール(商慣習)である。まず、卸売業者では、最初の3分の1の期間が過ぎた食品を破棄処分としている。したがって、小売店舗に納品される際には、賞味期限までの期間が3分の2以上残った状態となる。次に、小売店舗において、最後の3分の1の期間が迫った食品について破棄処分する。このように店頭に並ぶ賞味期限付き商品は、厳しく管理されているのである。
加工食品全体では、卸売業者から食品メーカーへの返品は取引全体の1パーセント程度になるという。公益財団法人流通経済研究所によると、3分の1ルールの中でも卸売業者から小売店舗への納品期限は、食品ロス削減という観点からも可能な限り見直さなければならず、また、返品や廃棄率を下げることにより経済的ロスを経済成長につなげていく必要があるという。具体的には、農林水産省及び経済産業省の協力の下、趣旨に賛同する、江崎グリコ株式会社<2206>、株式会社伊藤園<2593>、伊藤忠食品株式会社<2692>、イズミヤ<8266>などの食品・飲料メーカー、卸売業者、小売業者の計43社の参加により、試行的に小売店舗への納品期限を現行の「賞味期限の3分の2残し」から、「2分の1残し」へと緩和し、返品や食品ロスの削減効果を検証するパイロットプロジェクトを2013年8月から半年間程度実施。プロジェクト終了後、効果検証によって返品や食品ロスの削減に効果が見られた場合、広く広報を行うとともに納品期限の緩和を推奨するという。
今回は、あくまでも緩和を推奨するというところにとどまり、最終判断は企業間の判断にゆだねられるとのことであるが、このプロジェクトが最終的に成功するか否かは、消費者の判断にかかっているであろう。店頭には、賞味期限が迫った食品が並ぶことになる。必要なものを必要なときに必要なだけ購入する習慣のある消費者にとっては、さほど問題はないと考えられるが、安いときにまとめて購入する習慣のある消費者にとっては、賞味期限は長い方が便利である。でも、もし、消費者に広くこの納品期限に関するルールが知れ渡り、食品ロスと経済ロス、ひいては無駄なエネルギーの消費を減らすために納品期限の緩和は必要なことであるという認識ができれば、うまく浸透していくのかもしれない。(編集担当:中村小麦)