ESA、アリアン6ロケットの基本構成をまとめる
2013年7月12日 21:15
現在商業打ち上げで活躍中のアリアン5ロケットの後継機となる、アリアン6ロケットの基本となる構成の案を、欧州宇宙機関(ESA)が7月9日、明らかにした。
アリアン6は2021年ごろに登場する予定で、昨年秋に開催された、ESAの閣僚会議において開発を進める方針が決定された。中国やロシアはアリアン5と似た性能で低価格のロケットを保有しており、以前から激しい競争を強いられてきた。さらにスペースX社のファルコン9のような、民間企業による安価なロケットも登場したことで、より競争が熾烈になることが予想される。
アリアン6の構成をどうするかは、実に100を超える案が検討されたと言われ、その結果、今回基本構成として発表されたのはマルチPリニアと呼ばれる案だ。直訳すると「線形の複数のP」とでもなろうか、Pとはフランス語のPoudreから取られており、固体ロケットを意味し、つまり固体ロケットを線上に複数並べた、という意味になる。アリアン6の第1段は固体ロケットを3基横に並べた構成で、さらに第2段にも固体ロケットが使用され、つまり固体ロケットが縦と横に線上に並べた形をしている。これら4基の固体ロケットは基本的に共通のものが使われ、大量生産による低コスト化と信頼性向上が図られる。
第3段には液体水素と液体酸素の組み合わせを使用するヴィンチと呼ばれるロケットエンジンが使用される。ヴィンチはアリアン5の改良型であるアリアン5 MEで実用化される見通しで、再点火能力を持ち、2機の衛星をそれぞれ異なる軌道に投入することが可能となる。
衛星フェアリングはアリアン5と同じ容積が確保され、アリアン5で打ち上げていた衛星はそのままアリアン6でも打ち上げられるようになっている。
打ち上げ能力は静止トランスファー軌道に3.0t、また構成を変えることで最大6.5tまで対応できる。
この構成自体は以前から有力視されていたが、フランス国立宇宙研究センター(CNES)が独自に推していた形とはやや異なり、より保守的な姿となった。
今後も検討は続けられ、今年の10月に予備審査が実施される予定となっている。
■The baseline configuration of Ariane 6 selected by consensus on the basis of decisions taken by ESA’s Ministerial Council of November 2012 / Launchers / Our Activities / ESA
http://www.esa.int/Our_Activities/Launchers/The_baseline_configuration_of_Ariane_6_selected_by_consensus_on_the_basis_of_decisions_taken_by_ESA_s_Ministerial_Council_of_November_2012
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