米中戦略対話と防衛白書、過度の刺激は日本の立場を不利にも

2013年7月10日 09:50


*09:50JST 米中戦略対話と防衛白書、過度の刺激は日本の立場を不利にも
第5回米中戦略・経済対話が10、11両日、ワシントンで開かれる。

これに先立ち、中国の崔天凱・駐米大使は米CNNインターナショナルでのインタビューに応じ、米軍のアジア太平洋地域へのプレゼンスが「安全保障上の脅威に対して不釣合いだ」と指摘。米国は北朝鮮の核武装を理由にアジア全域に軍を展開しているが、崔大使は米国が「過剰反応し過ぎだ」と主張した。

このほか、沖縄県・尖閣諸島(中国名:魚釣島)を巡る日中領土紛争について、大使は米国政府が強調する中立姿勢を保てるか疑問に思うと発言。米政府高官は尖閣防衛が日米安全保障条約の範囲に含まれると発言しており、中国側が米国の“二枚舌”外交に不信感を募らせている様子が示された。

崔大使の発言から読み取れるのは、中国側が「米国は尖閣問題に関して中立」「アジア太平洋での米軍プレゼンス拡大は北朝鮮問題が主因」との認識を持っているということ。米軍がアジア展開を拡大しているのは中国の台頭を脅威としているからで、北朝鮮の核武装はプレゼンス拡大の表面上の理由に過ぎない。これが尖閣問題で米国が日本寄りの姿勢を示す屋台骨になっているが、米国としては中国の平和的台頭を望んでおり、無意味な対立は避けたいというのが本音だろう。

こうした中、きのう9日発表された防衛白書で、日本政府は尖閣問題に関して中国が「力ずくで奪取しようとしている」と強い言葉で非難した。日本経済新聞(10日付)によると、白書の概要に対してオーストラリア政府関係者や自衛隊内部から「刺激的」との声が上がったが、安倍首相が「いいじゃないか」とお墨付きを与えたことが表現を変えなかった理由になったという。さらに安倍首相は同日のテレビ番組で、中国が尖閣問題で「歴史問題を活用」していると主張した。

米中戦略対話で尖閣問題が特にクローズアップされるかは不明だが、オバマ米大統領が安倍首相の歴史を巡る姿勢を快く思っていない点には注意する必要があろう。専門家の間では「オバマ大統領が安倍氏を評価できないのは従軍慰安婦をはじめ歴史認識の見直しを主張しているからだ」と分析も。安倍首相が過度に中国や韓国を刺激し続ければ、米国の態度に変化が生じて日本に不利な状況が生まれる可能性が高まろう。《RS》

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