進化する3D 「見える」から「ある」へ

2013年7月7日 10:29

 映画やホームシアターシステムの普及などでお馴染みとなった3D映像技術だが、昨年の後半あたりから、次世代映像技術と注目される4K解像度に話題を奪われて、今ではすっかり、なりをひそめてしまった感がある。家電量販店でも、一時期もてはやされた3D液晶テレビが売り場の片隅に追いやられているのを見かけることも珍しくない。3Dはもはや時代遅れなのだろうか。

 3D映像技術自体は決して新しい技術ではない。映画などでもごく初期の段階から、立体写真の技法を応用して、立体映画の撮影が頻繁に行われていたという。また、近年の3D映画といえば、2009年に公開されたジェームズ・キャメロン監督による「アバター」が取り上げられることが多いが、それ以前にもデジタル上映による初めての3D映画「チキンリトル」が05年に公開されたことを皮切りに、ハリウッドでは多数の3D映画が製作されている。

 幾度となく話題には上るものの、その度に沈静化してしまう流行の波を繰り返している3D映像技術。しかし、近年になって、映画以外の実用的な活用法が模索されている。

 その一つが、キヤノングループのシステムインテグレーターであるキヤノンITソリューションズ株式会社が手掛けるMR(Mixed Reality)システム「MREAL」(エムリアル)だ。MRとは現実世界と仮想世界を融合させる映像技術。同社では、この技術の特長として、そこに「見える」というよりも「ある」という感覚に近いことを強調しており、3Dの進化系の技術と位置付けている。

 MREALでは、ユーザーがヘッドマウントディスプレイを装着することで、ビデオカメラが捉えたマーカー、あるいはセンサーにより、ユーザーの頭の位置や姿勢が精密に計測され、目の前の現実世界と仮想CG映像の世界を高精度で合成し、あたかも仮想世界に迷い込んだかのような、臨場感のあるMR世界が体感できる。

 従来の「見る」だけの3D映像とは異なり、家電や車などの仮想のモックアップ(デジタルモックアップ)を実寸で確認することが可能なので、製造業などでの現場でも導入が期待されている。これを利用すれば、設計の早期段階での評価が可能になり、試作回数や開発期間、コストの削減などにつながるという。

 また、同社では、これまでのヘッドマウントディスプレイ「HM-A1」よりも、手軽に使用できる手持ち型ディスプレイとソフトウェアのモデルの開発を進めており、2013年末の商品化を目指していることを明らかにしている。

 3D映像は迫力とインパクトがある分、長時間に渡って視聴すると、疲れを覚えることも多い。そういう面でも、エンターテインメント系の視聴よりも、実は製造現場などで実用的に使う方が、媒体の性質としては正しいのかもしれない。(編集担当:石井絢子)

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