新日鉄住金、世界初のLNGタンク用7%ニッケル鋼板を開発 半世紀ぶりの技術革新
2013年6月13日 20:10
新日鉄住金は13日、同社が開発した「LNGタンク用7%ニッケル鋼板」が、現在建設が進められている世界最大規模のLNGタンクに採用されたと発表した。7%ニッケル鋼板はLNGタンク用鋼板としては約半世紀ぶりの新規格となる製品であり、開発・実用化は世界初となる。
LNGは約マイナス162℃の極低温で貯蔵されるため、貯蔵タンク用鋼板には低温での高い破壊安全性と強度が必要とされ、これらの要求特性に優れるニッケルを9%含む9%ニッケル鋼板が半世紀に渡り主流となってきた。
一方、新日鉄住金は、高ニッケル鋼に熱加工制御技術TMCPを初めて適用。このTMCP技術の適用と化学成分の最適化によって鋼材組織を微細化し、ニッケル量を約20%削減しながら従来鋼と同等の高い安全性と強度を有する、省資源と高性能を両立させた新しいLNGタンク用鋼板「7%ニッケル鋼板」を世界で初めて開発した。
新日鉄住金は、7%ニッケル鋼板の実用化に向け、LNGタンク技術で国内外をリードしてきた大阪ガス及びタンクファブリケーターのトーヨーカネツと共同研究を行い、2010年度に経済産業省より、7%ニッケル鋼板がガス工作物の技術基準に適合するとともに9%ニッケル鋼板と同等性能を有していると評価された。これにより、大阪ガスの泉北第一工場(堺市)の5号タンクに7%ニッケル鋼板が採用された。
泉北第一工場5号タンクは、内容量230,000m3の世界最大級のLNGタンク。タンクの建設は2012年9月に始まり、完成は2015年の予定。泉北5号タンクには7%ニッケル鋼板が最大板厚約50mmを含む約3,800トン使用される。
なお、新日鉄住金は、7%ニッケル鋼板の開発・実用化が一般社団法人日本ガス協会より評価され、2013年度の「技術大賞」を鉄鋼メーカーとして初めて受賞した。
7%ニッケル鋼板は2013年3月に日本工業規格(JIS)を取得した。また、海外規格においても2013年6月にASME規格を取得し、さらに今後ASTM規格も取得する予定であり、新製品の普及に必要となる規格化を着々と進めている。
クリーンエネルギーとして従来から注目されている天然ガスは、採掘での技術革新(シェールガス革命)もあり、今後生産・需要が大きく拡大することが見込まれている。天然ガスを効率的に輸送し、貯蔵するには液化が必要であり、LNGの輸送・貯蔵に関する鋼材需要の増加も見込まれる。新日鉄住金は泉北第一工場5号タンクでの採用を踏まえ、7%ニッケル鋼板の国内外の新設LNGタンクへの展開を進め、拡大するLNG需要に対応していく。