米国の相場格言『6月に売り逃げろ』は気になる、6月・12月期の好配当利回り銘柄の適正株価が先行きのシグナル=浅妻昭治
2013年6月3日 09:44
<マーケットセンサー>
■米国の相場格言『Sell in May,and Go away(6月に売り逃げろ)』は気になる
話が、全然、違うのである。「アベノミクス」相場は、7月の参議院議員選挙まで持続するはずであった。それが、5月24日の日経平均株価の1143円安以来、乱調続きとなっている。全国的に梅雨前線が、10日から11日も早く日本列島を覆ってきたが、この梅雨入りに先立ってさらに2カ月弱の早い調整入りである。
参議院選挙のあとには、本家本丸の消費税引き上げに向けた政治決断が控えており、株価の上昇は、内閣支持率の上昇とパラレルに連動していただけに、このまま調整が長引くようでは、消費税の引き上げはおろか、参議院選挙の動向も覚束ない。野党各党が騒ぎ立てているように、「アベノミクス・バブルの崩壊」につながるのか、いささか心配になる。
話が違うことはまだある。例の米国の相場格言である。「Sell in May,and Go away(6月に売り逃げろ)」である。本家本元の米国のNYダウは、前週末31日は208ドル安と急反落したが、週足では陽線を示現してなお史上最高値水準にあり、相場格言は、空砲となったが、東京市場は、まさにこの相場格言通りの日経平均の急落となった。もともと米国の量的金融緩和策の資産買入規模の縮小懸念で米国の長期金利が上昇したことが遠因で、この感染で日本の長期金利も上昇して円高となり、トバッチリで株価も急落しただけに、話が違うのである。
6月は、この米国の相場格言に続いて、日本市場特有のアノマリーもある。「2日新甫は荒れる」という株価現象である。6月は、もろ「2日新甫」とはならないものの、月初の商いが3日から始まる。それでなくともヘッジファンドの多くが、6月末に中間決算期を迎え、45日ルールの解約通告期間を経過して解約売りも観測されているのである。またまた話が違うついでに、「リスク・オン」のはずが、「リスク・オフ」に逆戻りするのではないかとする警戒感もいっそう強まってくる。
警戒感が強まると、相場は、買い方がつくるものではなくなる。売り方がつくることになる。買い物が引っ込んだなかで、損失回避のわれ先の売り物や、売り方が、「買い」で取れなければ「売り」で取ろうと売り叩くカラ売りなどで一方通行の売りが募り、この売り圧力を前に下値でその耐性、打たれ強さを確認して初めて相場自体が自律反発に転じる相場展開である。
相場格言でいえば、「安値で出る悪材料は買い」かどうかを試すのである。今週は、米国で相次ぎ重要経済指標を発表し、安倍晋三首相が、成長戦略の第3弾を発表するが、そんなファンダメンタルの材料に変に一喜一憂したり、株価急落の真犯人をあぶり出し、もしかしたら発動されるかもしれない市場対策に期待したりするよりも、ここはむしろ悪材料を待ち望み、歓迎した方が、相場の立ち直りは速くなるというものである。
そこで、この株価底打ちを確認するリード株で注目したい銘柄がある。6月末に配当権利付きの最終日を迎える6月期・12月期決算銘柄である。カサにかかった売り物と配当取りの買い物との交錯が、どの株価水準で折り合いをつけるか見定めれば、先行きのシグナルとして自ずと株価の適正水準が浮かんでくるはずだからである。
例えばキヤノン <7751> は、今12月期配当を期初に未定と予想している。前期も、期初に未定と予想したが、期の経過とともに期末の創立75周年記念10円の増配まで含めて130円配当に増配し、期中に3回の上方修正や自己株式消却などの株主配分を強めた。6月中間期末が迫って、年初来高値4115円から600円幅の調整をしている同社株が、前期配当並み継続を前提の中間配当取りの3.6%の配当利回り水準や、市場予想の120円配当前提の3.3%水準で目先の下値確認となるのか、それとも今年5月安値3400円まで下値を探るのか、さらに4月の年初来安値3070円まで突っ込まないと下値確認とならないかで、全般相場の方向性を示唆してくれそうである。
配当利回り水準との兼ね合いで底入れを示唆してくれそうな6月期・12月期決算会社は、キヤノンだけにとどまらない。インカム・ゲインが、キヤノンを上回る銘柄、遜色のない銘柄が揃っているだけに、6月末接近とともに、各銘柄の投資判断時期も煮詰まってくることになる。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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