【日経平均】31日、185円高の13774円で波瀾万丈の5月も終了
2013年5月31日 20:11
NYダウは21ドル高。長期金利上昇は一服。1~3月期のGDP改定値、新規失業保険申請件数とも市場予測を下回り、本来は悪材料だが、量的緩和の縮小が先延ばしになるから株価には好材料とみなされるという面白い現象も起きた。31日朝方の為替レートは、ドル円は101円台前半、ユーロ円は131円台後半で、少しだけ円安になっていた。
取引開始前は国内経済指標の発表ラッシュで、4月の全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比-0.4%で6ヵ月連続下落だが3月より0.1ポイント改善し、5月の東京都区部のCPI は0.1%のプラスでポジティブサプライズ。4月の失業率は4.1%で横ばいだったが、有効求人倍率は0.89倍で3月の0.86倍を上回りリーマンショック前の水準を取り戻した。4月の家計調査の2人以上世帯家計支出の伸び率は+1.5%で3月の+5.2%から急落し市場予測も下回った。4月の鉱工業生産指数速報値は+1.7%で、市場予測の0.5%を大きく上回り5ヵ月連続のプラスが続いている。全体的におおむね良しというところ。
日経平均は215.20円高の13804.23円の大幅反発で始まり、前場はおおむね13800円台を維持して時々13900円にもタッチする堅調な展開。日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、株価が上昇した際のポートフォリオ調整のリバランス売りについて運用の弾力化を検討と報じられたのも市場の安心感を誘う。ところが、後場は13800円台で始まりながら、為替の円高でまたもや日経平均は急落。一時13681円まで下落しTOPIXはマイナスになった。「またか」とため息が出そうな場面だったが、その後はしっかり13800円台にリカバリー。午後発表の4月の新設住宅着工戸数は前年同月比+5.8%増で8カ月連続増と順調だった。
午後2時59分まで13800円台をキープしこのままフィニッシュかと思われたが、大引けで下落して日経平均終値は185.51円高の13774.54円で、星取は3勝2敗でも-837.91円で前週より下落幅が大きかった今週の取引を終えた。日経平均終値は4月30日の13860円、5月1日の13799円を上回れず、5月はまさに「Sell in May」。前月末比上昇とローソク足の陽線(白)の連続記録は9ヵ月でストップした。市場から「go away(逃亡)」した個人投資家も少なくなかったようで、売買高41億株、売買代金3兆2441億円は、5月第3週平均の49.8億株、第4週平均の61.4億株と比べると明らかに低下していた。東証1部は値下がり銘柄537に対し値上がり銘柄が1093と2倍以上あったが、TOPIXは+1.36の1135.78と小幅高で終えている。
上昇セクターは水産・農林、金属製品、不動産、ゴム、繊維、建設など。下落セクターは海運、その他金融、保険、電気・ガス、証券、輸送用機器などだった。
日経平均寄与度は「御三家」に京セラ<6971>、KDDI<9433>を足して+122円。泣くも笑うもこれら数銘柄の値動き次第。ただ、大引けの下落の主因は総額280億円と予想されたMSCIのリバランス売りで、利益確定売りの金曜日でもあり月末のドレッシング買いに打ち勝った。その半年に1度のMSCIインデックスの採用銘柄入れ替えで外れたのは電気化学工業<4061>、日本製紙<3863>、ウシオ電機<6925>、GSユアサ<6674>の4銘柄。採用されたのはガンホー<3765>、ほくほくFG<8377>、東京建物<8804>、ユナイテッドアーバン投資法人<8960>、横浜ゴム<5101>の5銘柄で、終値を基準に指数に組み入れられた。採用銘柄の星取は過去2回は1勝しかできず負け越しが続いていたが、今回はガンホーという超大物もいて4勝1敗の好成績で、ほくほくFGは売買高6位に、東京建物は売買高10位、売買代金8位に入っていた。
政府の原子力損害賠償支援機構に6000億円を超える資金援助を申請と報じられた東京電力<9501>は4円安でも売買高、売買代金1位。原発事故の賠償費用が東電の想定を上回っても政府が資金を供給する限り、東電株のこの人気は続くのか。一方、原発がない沖縄電力<9511>は三菱UFJモルガン・スタンレー証券が投資判断を引き上げ、445円高で値上がり率7位になっていた。
自動車株は前日は大崩れの中で踏ん張っていたが、この日は大引けにかけて売られる銘柄が続出しトヨタ<7203>が50円安、富士重工<7270>が104円安になった他、マツダ<7261>もホンダ<7267>も日産<7201>も三菱自動車<7211>も軒並み下落してTOPIXの下げを演出していた。
ソニー<6758>は、株主提案のエンタメ部門の分離・上場についてモルガン・スタンレーやシティグループと協議中とブルームバーグが報道しNY市場のADRが高騰し、東京市場でも42円高。パナソニック<6752>は前日の中期経営計画説明会で、テレビ・液晶パネル部門を2016年3月期に黒字化する目標や、自動車・産業用機器事業で3年間で約5000人を削減するといった方針を打ち出したが15円安だった。
冷凍機メーカーの東洋製作所<6443>にTOBをかけ完全子会社化すると発表した三菱重工<7011>は8円安。買収される方の株価が上がるお決まりのパターンで東証2部の東洋製作所は80円高でストップ高比例配分になった。6月1日にスマホに押されているデジカメ事業を統合・再編と報じられた富士フイルムHD<4901>は値動きなし。みずほ証券が投資判断を引き上げたLIXILG<5938>は161円高。松江市が本店の地銀、山陰合同銀行<8381>は66円高で値上がり率10位に入った。
伊藤園<2593>は6月3日に発表する2014年4月期の営業利益が15%増の230億円で7期ぶりの最高益を更新すると日経新聞が業績観測し75円高。新聞に載ること自体、前日に東証から7月3日の上場を承認されたサントリー食品インターナショナル<2587>を強く意識しており、「お~いお茶」対「伊右衛門」の販売競争が激化しそうだ。東証1部に上場して2日目のジェイアイエヌ<3046>は290円高で面目をほどこす。2016年に中国の店舗数を100にすると発表。現在は12店舗で年20店のペースで出店する。
今週、債券市場に振り回され続けたのが不動産だが、長期金利終値は0.865%に低下して大手3社は揃って反発。13年11月期の中間決算を発表し最終利益が13%増の48億円で最高益を更新した駐車場のパーク24<4666>は69円高と買われた。
この日の主役は水産・農林セクターの極洋<1301>。子会社の極洋水産所属の漁船が14日に太平洋のカロリン諸島沖で、小型ボートで約3カ月間漂流中のキリバス人の漁師2人を救助し、30日に清水海上保安部から感謝状を受けたニュースが入った後場、急に人気化して売買高15位になり、53円高で値上がり率2位に入った。2005年4月のJR福知山線脱線事故の際、業務を中断して社員が乗客の救助にあたった日本スピンドル<6242>(2010年上場廃止)もそうだったように、人助けをしたら会社の株が上がる。せちがらい相場が続く中、一服の清涼剤だった。(編集担当:寺尾淳)