トルコ爆発事件 シリア内戦の影響か?
2013年5月14日 20:00
シリアと国境を接するトルコ南部レイハンルで、2台の車に仕掛けられた爆弾が爆発した。少なくとも46人が死亡し、100人以上が負傷した模様。800軒以上の店舗や家屋、60台以上の自動車が被害にあった。民族問題を抱え以前から衝突が起きていた同国でも、史上まれに見る規模のものだったという。
海外各紙は、シリア紛争の影響に警戒心を表しているトルコの様子を報じている。
【テロを引金にした、エルドアン政権への揺さぶりか】
トルコはシリア反体制派を支持しており、900km以上に及ぶ国境においても、彼らが活動拠点として使用することを容認してきた。今回の事件も、トルコのエルドアン首相が、シリア紛争解決に向けて米オバマ大統領と会合の準備を進めている最中での出来事であり、アサド政権の関与を各紙は示唆している。
また、フィナンシャル・タイムズ紙によると、警察当局は既に主犯格を含む9名のトルコ人を逮捕。シリア情報機関と関係していると供述しているという。
トルコ国内の不安を仰ぐ事で、反体制派支持の政府に対する国民の怒りを喚起させることが目的だとし、アサド政権に対して警戒心を露わにしているようだ。シリア政府は関与を否定しているが、必要なら今後、調査で得た証拠などを明らかにしていく方針だという。
トルコはこれまでに30万〜45万人のシリア難民を受け入れており、今回の事件で多くのトルコ人が犠牲となったことで、国民の苛立ちは抑えられそうにないようだとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。爆発が起きたレイハンル近辺では、住民らがシリア人難民やシリアナンバーの自動車を襲う事件が相次いでいるという。
そもそもトルコ自体も多民族・多宗教国家であり、緊張関係にある集団もある。今回の事件が引き金となり、衝突が拡大しかねないとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。エルドアン首相はシリア紛争に巻き込まれないよう慎重に対応する方針を訴えており、今こそ国民の団結が重要だと述べている。
【内包するクルド問題への影響は?】
トルコ政府が、確証ないままアサド政権を糾弾する背景には、自国内のクルド民族問題をこじらせないことも目的の一つだと、ニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。
政府は近年、長く対立してきたクルド系移民との和解に向けて、クルド労働党らと話し合いを進めていた。同紙は、その協議が不安定な状況下で起きた爆発事件に対して、クルド人に非難が向くことを避ける必要があったと分析している。