貯蓄より消費で百貨店株にはアベノミクス相場の第2ラウンドを期待=浅妻昭治

2013年5月7日 09:59

<マーケットセンサー>

  やっぱり頼りになるのは、米国市場である。連休の谷間の5月3日の米国市場では、NYダウが一時、初めて1万5000ドル台に乗せて史上最高値を更新し、為替相場も、1ドル=99円台まで再び円安が進んだからである。4月の雇用統計で雇用者数が、市場予想を上回る雇用者増となり、失業率も低下、景気の緩やかな拡大を裏付けたと評価された結果だ。

  連休の谷間の東京市場では、日経平均株価が続落して売買高も減少して連休明け後の相場の先行きに警戒感が高まっていただけに、NYダウの史上最高値更新で、まずは一安心というところである。これで今週に発表が予定されているトヨタ自動車 <7203> の3月期決算が、5月6日付けの日本経済新聞の観測報道通りに前期業績の上ぶれ着地、今期営業利益の6割増益となり、続く主力株の決算も、市場コンセンサスに応えるそれなりのポジティブな内容となれば、「アベノミクス相場」の第2ラウンド発進の期待も高まってくる。日経平均株価は、1万4000円台、為替相場は、1ドル=100円台乗せの上値フシ抜けに再トライすることになる。

  もちろんその際の中心銘柄は、「日本買い」の日経平均株価の寄与度の高い銘柄となるはずで、トップスリーは、ファーストリテイリング <9983> 、ファナック <6954> 、ソフトバンク <9984> である。問題は、この3銘柄が、市場の期待ほどのパフォーマンスを示現できなかった場合の対処法にある。ファーストリテイは、連休の谷間に発表した4月の月次売上高がマイナス転換し、ファナックは、今3月期第2四半期業績が連続減益予想で中国の景気もカゲを落としており、ソフトバンクは、例のスプリント・ネクステルのM&Aの先行きが予断を許さないなど、ややアゲインストな材料が控えたままで、これを乗り越えていくだけのパワーがあるのかないのかいまひとつ気懸かりではある。

  そこでである。昨年11月以来の「アベノミクス相場」の初心に戻り、第1ラウンドの再現を先取りする対処法を提案したいのである。「アベノミクス相場」は、何といっても資産効果相場である。とにかく、「アベノミクス」は、消費者物価上昇率2%超の目標値を掲げてデフレ脱却を目指すのが最大の政策ミッションとなっている。この効果はすでに個人金融資産に表面化している。昨年10~12月期段階の個人金融資産は、1547兆円と直前四半期(7~9月期)に比べて38兆円増加したが、この内訳は、例年の賞与支給などによるフローの流入が20兆円、株式・投資信託などの時価の増加が18兆円と推定されている。日経平均株価が、昨年9月末の8870円から12月大納会の1万230円まで15%上昇する間に個人投資家はそれだけ株式投資のリターンを稼いでいたことになる。

  「アベノミクス」の狙いは、まさにこの「貯蓄から投資」、「投資から消費」の一サイクル完了によりフトコロの潤った個人投資家からどれだけ消費マインドを喚起するかを本旨としている。あるいは、インフレ・マインドの醸成により「貯蓄から消費」への直接サイクルも想定している。金銭哲学、行動経済学では、「アブク銭はムダ遣い」として浪費に回ることが、古今東西、グローバルな常識となっていることを教えている。かつての日本の資産バブル当時は、日産自動車 <7201> の3ナンバー車「シーマ」がバカ売れした究極の「シーマ現象」が喧伝される前段階では、誰もがブランド物を一点だけ身につける「一点豪華主義」が持て囃されたものである。時計、バッグ、ファッションなど身近に置くだけで、自らバブル感覚に浸ることができた。

  今回の「アベノミクス相場」の第1ラウンドの初動段階では、このバブル再現を先読み、勝手読みして動いたのが含み資産株と小売り株であった。なかでも百貨店株は、高額商品の売り行きが復活して月次売上高がプラス転換、しかも都心に構える店舗の含み資産が拡大するとの思惑も加わり、大きく底上げ、日経平均株価をオーバー・パフォームした。高値もみ合い中の百貨店株にもう一度、チャレンジしてみるところである。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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