無償の音声合成・歌声合成ソフト「CeVIO Creative Studio FREE」公開
2013年5月2日 20:14
2013年4月26日、名古屋工業大学大学院の徳田恵一教授と大浦圭一郎特任助教らが率いる、同大学内ベンチャー企業「テクノスピーチ」が、簡単な操作でキャラクターの会話を制作できる無償の音声合成・歌声合成ソフト「CeVIO Creative Studio FREE」を公開し、話題になっている。
徳田教授らが中心となる名工大の国際音声技術研究所は、これまでにもオープンソースの音声認識エンジンである「Julius」をはじめ、「HMM(隠れマルコフモデル)」方式による音声合成システム、MMD互換の3Dインタラクションを加えた双方向の音声インタラクションシステム「MMDAgent」、歌詞とメロディーのデータを入力するだけで歌声を合成できる、歌声合成技術及び同技術を応用したボーカルシンセサイザー「Sinsy」など、多くの技術を世に送り出してきた。
個々の名称は一般的に馴染みが薄いが、これらの技術は主にオープンソース(BSDライセンス)で公開され、その一部はNTTドコモの「しゃべってコンシェル」をはじめ、Android 4.0以降の音声認識・音声合成など、多くのサービスやシステムに使用されており、近年のスマートフォンやタブレット市場には無くてはならない技術なのだ。
「CeVIO」プロジェクトは、そのテクノスピーチを中心に、デジタルサイネージ専門企業ブイシンクと、アニメイトグループのフロンティアワークス、さらに数社がサポート体制を敷いて活動している次世代ベンチャープロジェクト。
すでに東京のアニメイト秋葉原では、MMDAgentベースのデジタルサイネージ「CeVIO Vision」が稼動しており、「さとうささら」という等身大の女の子の姿をした3Dキャラクターが、訪れた客に感情豊かな会話を披露して注目されている。
また、アニメイト池袋本店に2台目の設置も検討されているという。
今回公開された「CeVIO Creative Studio FREE」は、音声合成・歌声合成を手軽にできる無料のアプリケーションで、Windows7以降のWindowsOSで動作する。
FREE版とはいえ、同プロジェクトのイメージキャラ「さとうささら」の台詞を日本語入力で作成し、「元気」「怒り」「悲しみ」という3つの感情を軸に、多彩なパラメータを組み合わせて、自由に構成、編集できる。同じキャラでもパラメータの調整次第で全くの別キャラのように表現が変えられるのが面白い。
残念ながら、このFREE版では、1プロジェクトで最大5分間という制約がある。しかしながら、保存もできるし、WAVへの会話の個別書き出しも可能なので、かなり幅広く利用できる。さらには、「CeVIO キャラクターライセンス」に基づき、制作した音声データはもちろん、「さとうささら」のイラストなどの2次創作物も非商用利用に限って使用可能となっている。
パッケージ版では、5分の時間制限がなくなるほか、新しいキャラクターがもう2人加わる。さらに、ビブラートや発声、ポルタメントやピッチなど、微調整ができるような仕組みも組み入れられる。
今後の展開としては「CeVIO Creative Studio FREE」は、音符の音階を決め、長さを調整して、歌詞を入れる「ソング機能」の追加など、バージョンアップを予定しており、VOCALOIDやUTAUと同様のユーザーインタフェースで入力できるようになるという。
VOCALOID「初音ミク」が大ヒットを飛ばし、未だに絶大な人気を誇っているが、近い将来、「さとうささら」が、その地位を脅かす日が訪れるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)