日本の技術が反撃の狼煙、手書きタブレット「enchantMOON」

2013年4月29日 15:50

 スマートフォンやタブレット全盛の昨今において、これまで日本のメーカーは海外勢に置いてけぼりを食らっている感が否めなかった。技術的にどれだけ優れていても、消費者ニーズに即したものづくりが行われなければ、消費者との距離は広がるばかり。それでなくても、インターネットを介して世界の商圏が狭まり、海外から魅力的な商品を手軽に購入できるようになった今、技術自慢をするかのような、高価なだけで扱いづらい製品に消費者の食指が動くことはありえない。

 スマートフォンやタブレットだけではなく、携帯電話、パソコン、テレビ、また、フラッシュメモリーやDRAM、液晶パネル、マイクロプロセッサーなどの電子部品にいたるまでことごとく敗退を続け、かつては世界でもトップシェアを誇ったエレクトロニクス大国としての日本は見る影もなく転落し、大企業が政府の援助を仰がなければ存続さえ危ぶまれる時代になってしまった。

 そんな中、ようやく日本の技術が反撃の狼煙をあげる時が来たと期待させられる製品が発表された。それが、ユビキタスエンターテイメント(UEI)が5月に発売を予定している日本製タブレット「enchantMOON」である。

 アップルやグーグル、サムソンなど、世界の名だたるトップメーカーがしのぎを削り、今や新参メーカーが参入の余地はないのではと思われるタブレット市場。しかも、今年はグーグルがメガネ型端末「Google Glass」の発売を年内に予定していたり、アップルも次世代ウェアラブル端末「iWatch」の発表を行うのではと囁かれているなど、大きな話題が目白押しのこの時期にあえて投入される「enchantMOON」とは、一体どんな機種なのか。

 まず、「enchantMOON」の特筆すべきは、搭載されているOSが、AndroidでもiOSでもなく、Androidと高速JavaScript仮想マシンをベースにUEIが独自で開発した「MOONPhase」というOSを採用している点だ。「enchantMOON」はこの「MOONPhase」によって、ユーザーインターフェイス要素を最小限に留めた、世界にも類を見ない「手書きに特化したタブレット」となっている。iPadやAndroidタブレットが確立し、現在の主流となっているタッチUIのトレンドに真っ向から逆らったコンセプトになっているところが、非常に興味深い。

 また、OSだけでなく、コンセプト設計には哲学者の東浩紀氏と、「ローレライ」や「日本沈没」などのエンターテインメント性の高い作品で知られる映画監督・樋口真嗣氏が手がけており、外観デザインはイラストレーターであり漫画家の安倍吉俊氏が担当。「enchantMOON」はまさに、日本の才能を結集したオリジナルのタブレットなのだ。

 肝心の使い心地の方は、OS内部の作り込みや専用ペンを含め、「書き味」にとことんこだわった作りとなっている。ほぼ真っ黒の画面に文字を手書きすると、それが即座に自動認識され、さらに指で囲むことでリンクしたり、ボタン化したり、様々な操作が可能となる。もちろん、手書き文字でWebページを検索したり、閲覧したWebページをペンで囲んで切り取って加工することもできる。

 4月23日の予約受付開始に併せて行われた内覧会の席上で、集まった報道関係者らの前でUEI代表取締役社長兼CEOの清水亮氏は「新しいことを考える時には必ず紙とペンで考える」と人間の思考形態について熱く語ったが、その持論をまさに具現化し、紙に書く感覚に限りなく近づけたものが「enchantMOON」なのだ。

 iPadやAndroidタブレットのような、指先で操作するタッチUIとは全く異なる新しいコンピュータの誕生に、市場の反応も敏感で、3万9800円という価格設定ながら、4月23日正午に受け付けを開始して、わずか30秒でシステムがダウンしてしまうほど、予約が殺到した。数時間後にはシステムを修復して受け付けを再開したものの、予想をはるかに超える反響が続いているという。日本の技術と発想が、世界の市場に再び認められるための反撃の狼煙となるのか、大いに期待したいところだ。(編集担当:藤原伊織)

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