日中間にある「尖閣と靖国」
2013年4月27日 15:39
尖閣諸島の領海内を26日も中国公船が航行した。尖閣国有化以来、頻繁に繰り返される領海内での航行。接続水域はさらに頻繁になっている。「尖閣は核心的利益」と中国。尖閣が主権にかかわる事案と主張するものだが、領海内での航行の常態化は中国領土を主張する既成事実の構築につながりかねない。
菅義偉官房長官は常に対中国、対韓国外交に「大局的見地」をいう。重要なことだ。そして「いつも中国に対して、(意思疎通を図るための)窓口を開けている」と。「中国や韓国との二国間関係は特に重要に思っている」「大局的観点から関係強化に努めていきたい」と。
そして、水面下では、あらゆるルートを駆使して関係改善へ努力していることは想像しうるが、関係改善を探りながら、一方で、中国や韓国の感情を逆なでする行為を肯定する。
国会議員168人が大挙しての靖国神社参拝や麻生太郎副総理ら3閣僚の参拝を「こころの問題、信教の自由」などとして自粛要請できないというより、「参拝は私的なもの」と肯定する。
両国を取り巻く微妙な状況で、慎重な対応が求められるなか、参拝を肯定してしまう政府に「関係改善を重視し、努力している」と相手国に映るだろうか。安倍晋三総理は「(参拝への抗議などに)安倍内閣は屈しない」と大人気ない答弁まで国会で言ってしまった。
野田佳彦前総理は強制はしなかったが、隣国への配慮か、外交を優先してか、閣僚在任中の靖国神社参拝には自粛を要請していた。中国や韓国がA級戦犯を合祀する神社への参拝に反発しているからに他ならない。これが外交上の配慮だろう。
同じ与党の公明党の山口那津男代表や石井啓一政調会長も「どう説明しようとも外交上の問題になる」と政府首脳クラスの参拝には配慮の必要性への認識を示した。経済界からも二国間関係への影響を危惧する声があがっている。
信教の自由やこころの問題をいうなら、政府として、まず、外交問題にさらされる「合祀問題の是非」を解決すべきだろう。さらに、無宗教な追悼施設を建設すべきかどうかも国会の場で議論すべきだ。
国会議員の参拝が戦後最高にのぼったのは安倍内閣であったこと、あわせて、参議院選挙を夏に控えていることなども背景にありそうだが、安倍総理が敬う天皇陛下もA級戦犯合祀を機に靖国参拝を控えておられるようす。そろそろ、合祀問題解決に努めてはいかがか。
尖閣国有化で接続水域や領海内航行が頻繁になっているが、麻生副総理ら閣僚の参拝、国会議員の参拝から特に航行の隻数や航行の長時間化が目立つようになっている。靖国参拝問題が国内以上に、中国、韓国にとって大きな問題なのだということを踏まえた対応が求められている。
こうしたなか、政府は26日の閣議で尖閣問題なども踏まえて「近年、海洋安全保障や海洋権益をめぐる主張や活動が活発化している」とし、警戒監視体制の強化を含め、海洋政策の指針となる海洋基本計画を決定した。警戒・監視の強化とあわせて、靖国問題、特に合祀の問題への政府や立法府による問題解決への取り組みは、国内問題ではあるものの、結果的に中国や韓国からも日本政府の友好的取り組み姿勢として受け止められることになろう。中国や韓国のためにすることではないが、日中韓3国のアジア圏での役割の大きさや連携強化の必要性からは外交政策を視野に取り組む課題であることは否定できない。
菅官房長官は戦後50年の村山談話、60年の小泉談話に続き、戦後70年(平成27年)の節に安倍総理の談話として「21世紀にふさわしい未来志向の談話を発表したい」と26日語った。そのときには総理が靖国を参拝しても外交問題にはならないよう解決されていることを望みたい。(編集担当:森高龍二)