魚離れプロジェクトの「ファストフィッシュ」とは
2013年4月22日 20:41
海に囲まれ多様な水産物に恵まれた日本で、魚離れが進んでいる。魚介類は昔からお米と共に重要な食料とされていたが、近年「食の欧米化」が進み、2006年には1人1日当たりの魚介類の摂取量が80.2gと、肉類の摂取量の80.4gに初めて抜かれた。その後も魚介類の消費量は低下の一途をたどり、2010年の水産白書によれば、国民1人1日当りの摂取量は、魚介類が72.5g、肉類が82.5gとますます差が開いている。
そこで水産庁は、24年8月から「魚の国のしあわせ」プロジェクトをスタート。生産者、水産関係団体、流通小売業者や各種メーカー、教育関係者、行政等、魚に関わる人々が一体となり、水産王国・日本で生活する幸せを、5つのコンセプト(味わう、感じる、楽しむ、暮らす・働く、出会う)により、国民の実感してもらう取組みを始めたという。
その取り組みの一環として実施されているのが「ファストフィッシュ(FAST Fish)」。これは手軽・気軽に美味しく水産物を食べること及びに簡単な調理法で水産物を食べられる商品・食べ方のことで24年8月から一般公募を開始している。「料理時間や買い物時間の短縮が想定される」「日常の食生活において、反復継続して購入することが可能な価格帯」「ターゲットを明確にした量目、パッケージ、保存性を有する」「新規需要の開拓に可能性がある」「品質・食味等の面で独自性がある」「原材料に特色がある」等の選定基準により選ぶ。認定されると、「ファストフィッシュ」と一目で分かるロゴマークをパッケージに表示できるという。
第1回目はイトーヨーカドー<3382>の「レンジアップ商品」やお菓子マーケットプレイスの「DHAぴちぴちいわしせん」、久慈市漁業協同組合の「骨取り味つきさんま」など、小売業とメーカーを合わせて32社53種の商品が選定されている。この「ファストフィッシュ」商品の発表は、今年の2月15日で第5回目を迎えている。前述した「レンジアップ商品」は長時間の加熱でも変形・変質しない専用トレーを開発し、お皿等に盛り付けなおす必要なし。電子レンジで温めるだけで生ゴミも出ずお手軽に調理が可能で、生ゴミが出ないことや調理が簡単なことが受け、売り上げは発売開始時に比べ4~5倍に増加したという。また「DHAぴちぴちいわしせん」は、イワシを骨まで丸ごとすりつぶしたものが入ったスナック菓子で、魚が苦手な人にも、おやつ感覚でイワシの栄養成分DHA等を手軽に摂取できる点が特徴だという。
さらに「骨取り味つきさんま」は、国内初のファストフィッシュで、骨がなくまるごと食べられ、小さな子供や高齢者にも好評だ。同製品はイオン<8267>が東北復興応援として、久慈市漁業協同組合と三陸鉄道と協力し発売。久慈市と直接取引により調達したさんまを原料に、岩手県藤沢産のにんにくを味付けに使うなど、東北の特産物を取り入れている。また三陸鉄道の復興への取組をイメージしたキャラクター「鉄道ダンシ」や三陸鉄道の景勝地をパッケージに掲載し、東北復興を支援。水産物の普及と東北地方の復興支援という2つのテーマを掲げている商品として注目を浴びているようだ。
「下処理や後片付けが面倒」「魚料理のレパトリーが少ない」等消費者の声に応え、魚離れに一役を買う「ファストフィッシュ」。優れているのは利便性だけでなく、魚介類の栄養面も見逃せない。魚介類にはたんぱく質以外に血中のコレステロールを低下させるEPAや脳の成長や発達に欠かせないDHA、視力の衰えを防ぐタウリンなど健康を維持・増進していくうえで有効な成分が豊富だ。学力・視力の低下や生活習慣病の増加が懸念される日本人にとって、その普及は重要な役割を担っているのではないだろうか。(編集担当:野口奈巳江)