【話題】黒田サプライズの賞味期限と安倍晋三内閣の成長戦略が次の焦点

2013年4月5日 06:40

  日銀は4月4日の金融政策会合で、物価上昇率2%目標を早期に実現するために新たな量的緩和策を決定した。決定内容がサプライズだったため、発表後に外国為替市場では急速に円安方向に傾き、株式市場では急反発に転じ、債券市場では10年物国債金利が急低下して約10年ぶりに過去最低を更新した。

  新たな量的緩和策の主な内容としては、金融緩和の指標を従来の翌日物金利からマネタリーベース(資金供給量)に変更し、2012年末に138兆円だったマネタリーベースを2013年末に200兆円、2014年末に約2倍の270兆円に拡大する、長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍にするなどとした。

  今回は黒田東彦日銀総裁の下で開かれる最初の決定会合であり、市場は「異次元の量的緩和策」を期待する一方で、会合直前には過度な期待感が発表後に失望売りに繋がるのではないかとの警戒感を強める場面もあった。しかし発表された決定内容は、量的にも質的にも市場が期待していた以上に大胆な内容だったため「満額回答以上」という声も聞かれ、麻生太郎副総理兼財務相は「次元の違う金融政策に踏み込んだ」と述べ、政府代表として会合に出席した甘利明経済財政・再生相は「110点くらい」と評している。

  黒田東彦日銀総裁は会合後の記者会見で「戦力の逐次投入では2%目標は達成できない」「これまでと全く次元が違う金融政策」「巨額の資金供給を行い、期待を通じて物価を引き上げるリフレ政策で2%達成に集中する」「現時点で必要と考えられるあらゆる措置を取ったと確信している」などと述べ、新政策によって「今後2年程度で物価目標2%を達成できると信じている」とした。

  今後の焦点は「黒田サプライズ」の賞味期限となるだろう。黒田東彦日銀総裁が「現時点で必要と考えられるあらゆる措置を取ったと確信している」と述べているため、当面の手持ちカードをすべて出し切った形とも解釈でき、少なくとも次回4月26日の決定会合では追加緩和策は想定されないだろう。

  ただし、外国為替市場では「異次元の量的緩和」は織り込み済みとされていたにもかかわらず、決定内容が想定以上だったため黒田東彦日銀総裁の「本気度」が示されたと評価し、円安トレンドが継続して1米ドル=100円台が視野に入ったとする見方が優勢になった。4日の海外市場では1米ドル=96円台半ばまで円が下落するなど一段と円安方向に傾いている。当面は「黒田サプライズ」効果が持続しそうだ。

  そして今後、4月下旬から5月上旬にかけての主要企業の3月期決算発表、安倍晋三内閣が「第3の矢」として6月中に取りまとめる予定の成長戦略、7月に予定される参院選へと好材料が繋がり、日本経済がデフレ不況から脱却すると確信するためには、やはり「第3の矢」である成長戦略の具体化や大胆な規制改革が次の焦点になりそうだ。(本紙シニアアナリスト・水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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