「クロダミクス」効果を先取る「入口戦略」でファイナンス実施の不動産会社はなお上値妙味も=浅妻昭治

2013年4月1日 12:41

<マーケットセンサー>

  株式には、もともと「バブル」とは濃い血縁関係がある。DNA(遺伝子)の配列が共通していて、いつでも突然変異が可能だからだろう。これは、「バブル4兄弟」とも並び称された地価、ゴルフ会員権、美術品価格にも通じるところであり、あのバブル景気下で、大きく突然変異し、ついには悪性のがんにまで転化したことは記憶に新しい。

  このバブル景気当時のことで、いまでも思い出すことがある。1980年代の財テク・ブーム当時である。某大手商社が、財テク子会社を設立したとの小さな記事を新聞に載った。財テク子会社といっても、たかだか男性社員が2人、女性事務員が1人、机の上に電話が1本という会社の体をなさない小所帯にしかすぎない。

  ところがこの新聞記事が掲載されたとたんに、そのたった一本の電話は、朝から鳴りっぱなしとなった。そして千客万来となった証券マンを前に、商社マンが当惑顔で財テクの知識はない、財テク資金もないと断ると、証券マンは、委細呑み込み済みで資金提供から投資物件、さらには投資利回りまで提示、立派な財テク子会社に仕立て上げてくれたそうである。財テク子会社に配属された商社マンから聞いた実話である。これが例の営業特金、利回り保証、「にぎり」であり、バブル経済崩壊後は、損失補てん問題、証券不祥事事件にまでつながったことはいうまでもない。

  日本銀行の黒田東彦新総裁は、今年3月21日の就任会見で、現在の日本の資産市場にバブルの懸念はないと断言した。しかし、昨年11月中旬から日経平均株価が、約4カ月で46%も急騰し、この資産効果で百貨店では100万円以上もする高級腕時計などの高額商品が売れ始め、公示地価も底打ちから上昇転換の兆しを強め、REIT(不動産投信)指数が、高値を更新することなどをみると、またぞろ、バブルのDNAマインドが蠢き出してきているのではないかと、余計な心配をしたくもなる。

  新総裁就任後初の日銀金融政策決定会合が、4月3日、4日に開催される。株式市場では、打ち出される追加金融緩和策が、これまでの予想範囲内なら材料出尽くしとして調整局面入り、それとも文字通り異次元の緩和策発動なら「アベノミクス」相場の第2弾ロケット発射と見方が分かれており、動向が、新年度相場の最大の注目ポイントとなる。

  いずれのケースになるとしても、問題は、市場に供給される大量の流動性が新たな投資先に向かうかどうかが、20年も続いたデフレ経済からの脱却のカギになる。そうした有望投資先がみえてくるかどうかは、「3本の矢」の成長戦略次第となるが、その前に「アベノミクス」効果よりいつか来た道で「クロダミクス」効果を先取りして、手っ取り早くかの「バブル4兄弟」が息を吹き返す展開もなきにしもあらずである。

 兜町では、「肉は腐る前が一番うまい」といわれてきた。株価が、大きく盛り上がり総強気となるのは、天井近くの爛熟期という意味である。まだ「アベノミクス」相場の初動段階でバブルの心配をして「出口戦略」を模索するのは時期尚早ではある。ここは市場追随型でなお買い上がり方針の「入口戦略」で対処するのがベターとなりそうだ。そこで注目したいのが、黒田新総裁就任に先立って今年3月にファイナンスを実施した不動産会社4社と、同じく中止した会社が1社で、追加金融緩和策に乗って業績も株価もなお上値追いの期待が高まりそうである。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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