3Dから4Kへ① 4Kテレビは家電になりえるか?
2013年3月30日 19:04
4K時代の到来がにわかに加速の様相を帯びてきた。ここ数年間、市場では3D対応テレビが業界の次世代を担う商品として注目を集め、海外の名だたる家電見本市会場では、どこのメーカーのブースでも入口で3Dメガネが支給されるのが当たり前になっていた。ところが今年、年明け早々にラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「2013 International CES」では、その光景がほとんど見られなかったというのである。
つまり、世界の市場は、すでに3Dテレビに見切りをつけたということに他ならない。実際、日本でもスタートダッシュこそ、そこそこの売り上げと注目はみせたものの、業界を牽引するという程のものではなかった。
そこで、3Dテレビにかわる商品として、世界の家電メーカーがこぞって開発を進めているのが「4K」だ。実際、今年のCES関連の海外ニュースでも、4K商品を取り上げたものが圧倒的で、3Dテレビは取り上げられるどころか、「It‘s official: 3D is dead(公式発表:3Dテレビは死亡しました)」などと揶揄される始末。高額な3Dテレビを購入してしまった人は複雑な心境だろうが、それが世の常というもので諦めるしかないだろう。
何にせよ、業界は今、4K商品の開発を躍起になって進めている。しかし、人間の視覚能力的にみると、家庭での視聴に4K解像度は必要ないとする説もある。人間の視覚解像度は有限であり、テレビを視聴する際、一般的には平均約3mの距離を置いて視聴するが、この距離では画素の違いが判別できず、4K解像度はおろか720pのテレビですら充分なのだという。一般的な家庭のテレビ画面の大きさなら、せいぜいフルHD。4Kの解像度が判別できるのは、なんと80インチ以上のサイズになってからだというのだ。これは、CNETのGeoffrey Morrison氏という名物記者が、生理学的、数学的根拠に基づいて検証し、公開した記事で、一時大きな話題を呼んだので、ご存知の方も多いかもしれない。
また、4K解像度を投影するハコは有っても、それを撮影するカメラはまだ片手で数えられるくらいしか発売されていない。制作コストも莫大な予算が必要になるため、ソフトも少ない。もちろん、これらはこれからどんどん拡大、拡充されていく流れになるだろうが、現状としては手が出しにくい感もある。ましてや先の、視聴能力の限界の件もあり、これが真実だとするのなら、家庭用4Kテレビがどこまで浸透し、消費者のニーズを喚起できるのかは疑問が残る。
では4K、さらには今後近い未来に登場するであろう8Kは必要ないのかというと、そうとも言い切れない。映画やプラネタリウム等、大画面での視聴環境が必要な業務用映像にとっては、4K、そして8K時代が到来することは次の時代を切り拓く大きな意味があるだろう。とくに映画に至っては、ビデオやDVD、ブルーレイではなく、「映画館の大画面で映画を見る」という醍醐味と価値観を再認識させ、映画館、ひいては映画業界全体の活性化に向けて大きな足掛かりになるかもしれない。4K解像度が必要な内容のコンテンツを国内で制作できるかどうかという別の問題はあるとしても。(編集担当:藤原伊織)