グローバル志向の若者のチャンスを生かすステージとは

2013年3月30日 18:39

 現在、海外就職や赴任や留学を望まない内向き志向な若者が増加。国際的な人材の減少・若者のチャレンジ意欲が薄れることで、日本の将来に悪影響を及ぼすのではないかという懸念が唱えられている。また、この傾向を受け、政府も国際舞台で活躍できる人材育成を後押しするための方策「グローバル人材育成推進会議」を打ち出すなど、打開策を講じているという。

 このような中、明治大学経営学部・大石芳裕教授の「グローバル・マーケティング論B」という授業の一環として1月上旬に開かれた「アフリカビジネス提案最終報告会」では、学生たちから熱のこもったプレゼンテーションが繰り広げられたという。今回、対象企業の1つとなったのがヤマハ発動機<7272>。同社では海外市場開拓事業部(OMDO)がアフリカ市場を担当し、この広大な市場のほぼすべての国と地域に代理店を設置して船外機や発電機などのビジネスを展開している。

 同講座では、約70名の学生が4つの民間企業グループに分かれ、さらに一つの企業グループが数人ずつのチームを編成して約4か月間で企画をまとめた。そのうち、同社を題材にビジネスモデルをプランニングした3チームがこの日発表に臨んでいる。審査の結果、もっとも優れた企画提案として1位に選ばれたのは、「4輪バギーのシェアリング事業」を企画したグループ。交通インフラの整っていないアフリカで、農村部のBOP層の輸送・移動手段として4輪バギーの活用を提案する一方、経済的な理由から個人での所有が難しいことを勘案し、農機具などとともにシェアリングするという手段を導き出した。企画に当たっては「セネガル出身者にアフリカの生活のヒアリングもした」という。

 この提案に対し「現地に行ったこともなく、社会人としての経験もない若者たちの提案でしたが、調査も含めてすごく頑張っていたし、内容も良かった」と感心した表情を浮かべたのは、同社のOMDOでアフリカ市場を担当する西嶋良介氏。「事業としての課題はあるものの、農村部の市場開拓という着眼点は非常に良かった。私たちにとっても大変参考になりました」と総評している。

 海外での売上比率が9割に達する同社には、グローバルな事業活動に関心を抱いて入社する社員が少なくないという。ますます高まる世界規模でのビジネス展開を踏まえ、入社4年目までに100%の社員が海外経験を積むプログラムの実施や海外研修制度、海外留学制度の運用など、グローバルに活躍する人材の育成にも力を入れている。また、国籍を問わず海外の大学卒業者や日本への留学生の積極的な採用を行い、2014年には事務・営業系40名、技術系80名の採用を予定している。明治大学のアフリカビジネス提案最終報告会にも立ち会った同社人事部の川瀬信昭氏は、「今回発表を行った学生は、同社の求めるグローバル人材に不可欠な外向きの志向と発想力に溢れていました。このような方々と目標を共有したいとの想いを強く抱くと同時に、世界に通用する素養を持った若者がこの日本に着実に育っていることに対して頼もしさを感じました」と語っている。

 前述の内向き志向には実際、異論も唱えられており、若者の性質だけでなく、その要因として、新卒一括採用や終身雇用制度の下では海外での留学経験などが評価されにくいことや、就職活動が長期化し、学業に専念することが困難となったことなどの環境の変化も挙げられている。同社のような、グローバルな人材を必要とする企業の存在が、内に秘めたチャレンジ精神を持つ若者を発掘し、本来の実力を発揮するステージへとつながることに期待したい。(編集担当:宮園奈美)

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