国内出荷台数が50万台を超えるも、まだまだ潜在需要の大きい補聴器

2013年3月11日 16:53

 社会の高齢化が進むにつれて拡大が確実視されているシニア市場。旅行や医療・介護の市場など、拡大の予兆が見られる市場があまた見られる中、すでに堅調な拡大を見せている市場がある。それが補聴器の市場である。

 日本補聴器工業会のデータによると、難聴または恐らく難聴だと思っている人の割合は全体の10.9%。65歳から74歳に限定すれば18%と全体の平均を超え、74歳以上になると43.7%もの人が聞こえにくさを感じている。しかし補聴器使用率は全体で14.1%、65歳以上に限っても17.1%しか使用していない。これは、ドイツの34.0%やイギリスの41.1%、フランスの30.4%などといった他の先進国に比べて著しく低い水準となっている。こうした状況にも関わらず、1990年には30万1178台であった日本国内補聴器出荷台数は、1996年に40万台を超え、その後何度か踊り場はあったものの2012年には50万台を超え51万9131台となっている。これらの数字は、この市場は現状でもまだまだ伸長する可能性があることを示しているであろう。

 さらにこの市場拡大を加速させる要因は多々見られる。前出日本補聴器工業会のデータによると、仕事を持っている補聴器使用者の88%は、補聴器が仕事上で役立っていると回答。補聴器非所有難聴者は補聴器使用者と比べて夕方になると疲労が大きいというデータもあり、高齢者雇用安定法が改正され今後益々職を持った高齢者が増えることは確実視されることから、補聴器の需要は安定して増加するであろう。また、補聴器所有者のうち12%が障害者自立支援法又は自治体独自の支援制度に基づく公的支給補助を受けているという。しかし、制度の存在を知っている補聴器非所有者は6%にとどまる。その為、制度の周知徹底がなされれば、さらにこの市場は拡大する可能性がある。

 「両耳通信システム」など高スペックの補聴器や、程度難聴者向けの低価格補聴器など、補聴器のバリエーションも多彩になりつつある。近い将来補聴器は、多少歳をとったことに抵抗を感じつつも手にしてしまう老眼鏡のように、明確な障害者以外にもその利用が広がり、ごく一般的なアイテムとなるのかもしれない。(編集担当:井畑学)

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