医療・福祉分野、雇用は伸びても待遇上がらず?

2013年3月2日 17:48

 少子高齢化を背景として、不況下でも医療・福祉分野の雇用は伸びている。昨年の有効求人倍率 では製造業が対前年比マイナス11.7%であるのに対し、医療・福祉業はプラス9.3%。医療・福祉分野で働く人の数はこの7年で121万人も増加し、他の業種と比べて最も高い伸びを示している。

 介護が必要なお年寄りの数は今後も増え続けることから、現在約150万人いる介護職員は、団塊の世代が75歳以上になる2025年度には220万人以上必要になると見込まれる 。日本の将来を支える産業であることは疑う余地がなさそうだ。

 

 確かに雇用は拡大しているが、実際の労働現場はそう明るくない。求人を出しても人が集まらないのだ。厚生労働省の調査 によると、医療・福祉分野に新卒で就職した大卒者の4割が3年以内に辞めてしまう。新卒に限らなくとも、介護職員の離職率は16.1%と全産業の平均(14.4%)を上回る 。他業種と比べて仕事がきつい割に賃金が安いことが、離職率を押し上げる要因となっている。

 看護師の労働環境も深刻である。日本医療労働組合連合会の調査では、7割以上の看護師が「慢性疲労」であると認識しており、仕事上での強い不安やストレス、悩みを抱える看護師は7割にのぼる 。看護師は介護分野よりも多少賃金が高いものの、夜勤や長時間労働、休憩の取りにくさなど過酷な労働環境により体を壊す人も多い。

 医療・福祉の分野では基本的に人の手による丁寧なサービスが求められ、機械化や効率化には限界がある。介護施設では、お年寄り一人あたりのヘルパー数を減らせば効率は上がるかもしれないが、それでは一人ひとりに対するケアがおろそかになってしまうだろう。こうした分野では効率を上げることが、サービスの低下につながってしまうことすらある。

 不況下でも医療・福祉分野の雇用が拡大していること自体は、明るいニュースである。しかし同時に、現場の労働環境もあわせて改善していくべきだろう。

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