身近に溢れるタッチパネル、その市場規模と仕組み
2013年2月19日 13:20
スマートフォンやタブレット端末など、近年身の回りに増加しているタッチパネル。富士経済の調査によると、2012年のタッチパネル世界市場は、前年比46.5%増の11億2395万枚、5265億円と市場が急拡大している。しかし、利用者にはどれも同じに見えるタッチパネルにも様々な種類の仕組みがあり、それぞれに市場を形成していることを認識している人はあまりいないのではないだろうか。
現在、タッチパネルにおいて多く用いられているのが、静電容量方式と抵抗膜方式である。静電容量方式とは、表面の膜の電気容量の変化を感知するもの。表面の保護ガラスとセンサーガラスからなり、四隅から指までの距離を、指が触れることで生じる電気容量の変化で読み取るのである。さらに静電容量方式は、アウトセル型・カバーガラス一体型、インセル型、オンセル型に分けられる。一方の抵抗膜方式は、画面のガラスとわずかな間隔で取り付けたフィルムの双方に導通性の薄膜を貼り、両者を接して電気が通った場所を感知するものである。
2012年時点においては、静電容量式はアウトセル型が主流であり、タッチパネル世界市場の66.3%を占める。アウトセル型とは、実際の液晶パネルの上にタッチパネルを張り付ける方法である。前出富士経済の調査によると、アウトセル型のうち、低価格かつ軽量で耐衝撃性に優れたフィルムセンサーが復権しており、特にタブレット端末以上の大画面アプリケーションにおいて需要が拡大しているという。しかし今後は、アウトセル型ガラスセンサーからカバーガラス一体型への移行が進むとみられ、タッチパネル世界市場におけるアウトセル型の構成比は2017年に41.9%へ縮小すると予測されている。
一方のカバーガラス一体型とは、保護ガラスとセンサーガラスが1枚のガラスに一体化されたもの。構造がシンプルでコストダウンや薄型化が出来る一方、強度面など課題がある。そのため、アウトセル型からの移行が進んでいるとはいえ、強度が求められるスマートフォンへの搭載は鈍化している。しかし、スマートフォンほど強度が求められていないノートPCやウルトラブックでの採用は増えているほか、タブレット端末でも「Google Nexus 7」などへ搭載が進んでいるという。メリットは大きいだけに、強度面などの課題の改善が進むにつれ急速な需要拡大が考えられ、2017年にはタッチパネル世界市場の32.8%を占めると予測されている。
その他、オンセル型とは、画面の一番表面にある偏光板の内側、液晶表示装置を覆うガラスの上に乗せる方式、インセル型は、表示装置内に組み込んでしまうというものである。オンセル型は大半がアクティブマトリクス式有機EL(AMOLED)向けであり、「GALAXYシリーズ」のスマートフォンへの採用がほとんどである。またインセル型は、「iPhone 5」をはじめとしたハイエンドのスマートフォンに採用されている。インセル型は開発コストが高く、生産メーカーも限られることから、当面は一部のハイエンドのスマートフォンへの搭載に留まると考えられている。
こうした中、抵抗膜式は、最大用途先であった携帯電話、スマートフォンにおいて静電容量式への移行が進んでいることから、大幅に減少している。しかし、ゲーム機やカーナビ、産業用途では底堅い需要があるほか、静電容量式には向かないとされるペン入力が求められる用途やコストパフォーマンスが重視される用途などでは需要が残ると予想されている。
こうしてみると、他の市場にも増して技術力がシェアを決定づける傾向にあると言えるであろう。2017年には2012年比73%増の19億4160万枚、同68%増の8853億円へと拡大する見込みとなっている。外国勢に押されている分野であるだけに、日本企業には技術力だけでなくコスト力にも優れた開発を期待したい。(編集担当:井畑学)