大日本印刷、複製困難な人工DNAを含有した偽造防止向け印刷用インキを開発
2013年2月12日 12:44
独立行政法人理化学研究所のベンチャー企業であるタグシクス・バイオ株式会社と大日本印刷(DNP)は12日、模倣が極めて困難な人工DNA(デオキシリボ核酸)を含有した偽造防止効果の高い印刷用インキを開発したと発表した。この人工DNA含有インキは第三者による模倣がほぼ不可能であり、高度な真贋(しんがん)判定を実現するため、紙幣や金券など強固なセキュリティーが求められる高付加価値印刷物の偽造防止を図ることができる。
今回開発したDNAインキは、タグシクス・バイオが開発した人工DNAを利用している。この人工DNAは、基本となる4種の塩基に加えて人工的に作り出した塩基対を組み込んでいる。人工DNAの分析には独自の特殊なノウハウを必要とするため、第三者による模倣は極めて困難。また、人が触れたりなど外部からDNAが混入した場合でも、人工DNAには人工の塩基が組み込まれているため混入DNAとは区別ができ、誤認などを防ぎ解析精度が高いことが特長となっている。
DNAのような生体分子は、光や温度、湿度などの環境条件によってはその保存性が低下するという問題があった。今回大日本印刷は、光に強い塩基配列の人工DNAを使用するとともに、印刷物表面に人工DNAが露出しないよう表面を保護インキでコーティングすることにより環境条件による悪影響を受けづらくなり、DNAの保存性を改善した。同時に、独自の技術によってインキ内のDNAの検出を可能にした。
人工DNA含有インキの真贋判定については、インキ内のDNAの有無を確認する簡易認証と、インキ内のDNAの塩基配列を解析し真贋を判定する最終認証の2通りがあり、確認に要する時間は簡易認証で最短半日程度、最終認証で最短1日半程度となっている。
なお、DNAインキを使用した金券などの制作費は、50万枚を作る場合で、1枚あたり、DNAインキを使用しない場合の費用に対して10~20%程度の増加で抑えられるという。
今後、タグシクス・バイオと大日本印刷は、国内外の紙幣やパスポート、有価証券や公的文書などのセキュリティー製品向けに販売を行い、1年間で約3億円の売上を目指す。