YAMAHAが考える「感動」のカタチ
2013年1月28日 11:00
昨年末、楽器や音楽のヤマハとヤマハ発動機が主催するグラフィックアートコンテスト「グラフィック グランプリ バイ ヤマハ」が初めて開催された。このコンテストは審査員長にアーティストの日比野克彦氏をむかえ、「若い感性による『今の時代の感動』を広く世の中に伝えクリエーター、アーティストの発掘・育成に寄与するとともに、両『ヤマハ』ブランドの価値向上を図っていく」のが狙いだという。
コンテストには第1回にもかかわらず1585作品の応募があり、その中から1次審査、ソーシャルメディア上での公開審査、2次審査を経て7作品を選抜。最終審査会では審査員長の日比野氏、ヤマハの梅村 充代表取締役社長、ヤマハ発動機の柳 弘之代表取締役社長と両社のデザイン部門のメンバーが参加し、審査を行った。グランプリには東京在住の楠 陽子さんの作品『触覚の視覚化』が選出。副賞としてヤマハとヤマハ発動機の木工、金属加工技術を駆使し、バーチャルの世界でも楽しめるデータカードがセットされたトロフィーと、ヤマハ創立125周年にちなんだ賞金125万円が贈られた。
「締切ぎりぎりまで(コンテストに)出そうか、出すまいか迷っていましたが、出してよかったと思います。こういう場を作ってくださった皆さんに感謝します」グランプリの楠さんは受賞後のスピーチでそう語った。グランプリを除く各賞受賞者と作品名は、日比野克彦賞に森未央子さん(東京都)の『フランジ』、オーディエンス賞が松田雅史さん(ドイツ)の『9,332km遠くの人 15.09.2012~15.08.2012""が選ばれた。なお1次審査を通過した30作品はグラフィック グランプリ バイ ヤマハの公式ホームページで見ることができる。
ところで「ボクが若いころには、企業の積極的な後押しもあって、グラフィックやアートのコンテストがたくさんあったのですが」と自らもコンテストで脚光を浴びた経験がある日比野克彦氏は、最近のアート界の状況をほのめかしながら、「グラフィック グランプリ バイ ヤマハは、コンテストにお金を出して後援するというのではなく、ヤマハとヤマハ発動機の社長、それに両社の社員デザイナーが参加して、両社をあげて発信していこうという気持ちがうれしいですね。若いグラフィックデザイナーやアーティストに発表の場を与えるだけでなく、ヤマハとヤマハ発動機が自分たちの美意識を再構築していこうというところに、ふたつのブランドの力とか強さの秘密があるような気がする」と話した。
ヤマハの梅村 充社長は、「応募作品を送って、あとは受賞を待つのではなく、最終審査に先立って、審査会場でアーティストが自らの作品について語り、そのコメントもまた審査の対象になるというコンテストは新しい。こういう画期的なコンテストに関われることで、わが社も活性化できると思います」そう語り、一方、ヤマハ発動機の柳 弘之社長が、「ブランドの根幹を共有するヤマハといっしょにコンテストを開催できたことは大きい。ぜひ第2回、第3回と回を重ねていき、10年後には日本武道館、20年後にはカーネギーホールで開けるまでに、このコンテストが成長させられたらうれしいですね」。次回開催を約束して、グラフィック グランプリ バイ ヤマハの最終審査・表彰式を結んだ。
いわゆる企業メセナをはじめ、文化、スポーツ分野からの企業の撤退が著しく、若い才能の発表の場が狭められている昨今、ヤマハとヤマハ発動機の今回のコンテストは、グラフィックの世界のみならず、今後の企業による文化・スポーツへの貢献の新しい形としても注目を集めることになりそうだ。