個性的な社員教育は離職率低下に貢献できるか

2013年1月28日 11:00

 最近、若者の離職率の高さが叫ばれているが、昨年10月末に厚生労働省から入社後3年以内に離職する割合が発表され、話題を呼んだ。2009年3月に4年制大学を卒業し、正社員や契約社員などで就職した若者を対象に行われた調査だが、業種による片寄りも見られた。

 離職率の高さは企業にとっても大きな問題だ。やがてはその企業の中心となって働かなければならない生え抜きの人材が育たなければ、社内の活性化はおろか、企業の成長の妨げにもなってしまう。一方で、人材を育てる側の意識の欠如やマネジメント能力の低下なども叫ばれており、上司も部下も人材が育っていないと嘆く企業も少なくない。

 そんな中、定着率を高めるため、また、管理職に向けての教育に意義を感じてもらうために、ユニークな人材教育制度を導入している企業もある。

 家電・パソコンの大型量販店ノジマ<7419>は販売士や社労士・税理士など資格取得のための通信講座を無料で受講できるようにしている。

 エスビー食品<2805>は3段階で多数のプログラムを導入し、人材教育を実施している。面白いのは入社の半年前から同社独自の通信教育を実践、社会人としての基本を事前に学ばせていること。他にも自己啓発プログラムとして、ビジネス関連の講座を中心に150コース程の通信教育を用意、受講料の40~50%を会社が負担している。それから、OJTの一環として、新入社員を同じ部署の先輩社員が一定期間「エルダー」と呼ばれる教育係としてマンツーマンの指導を実践し、新人・先輩が共に"教える""教えられる"立場として経験を積むという制度もある。

 このような研修・自己啓発タイプの人材育成の他にも、最近増加傾向にある人財公募を行う、人事に関連した制度を教育に活かす企業もある。

 住宅メーカーのアキュラホームは、昨年より「キャリアデザイン制度」を導入した。これは、自己申告や所属長からの推薦を受けた社員が、自分のキャリアについて思いを表現するプレゼン会を行い、実際の人事異動に反映されるもの。これによって、プレゼンテーション能力などが育成され、また、上級管理職を集めたワークショップにより人材育成の重要性とキャリアデザインが、強い組織を作るファクターであることを参加者が共有する。他にもビジネスアカウンティング・人材マネジメントなど多岐に渡る講座から自分の興味のあるeラーニングを選択し、100以上のコースを受講することができる。

 最後に紹介するのは合宿のように、短期カリキュラムで教育を行う場合だ。

 日清食品ホールディングス<2897>は新任の管理職に対し、無人島での2泊3日サバイバル研修を行っている。過酷な状況での精神・肉体を鍛錬し、「骨太の管理職」を育成するのが目的だ。同社は2003年よりこのスタイルの研修を導入しており、過去には山修行や被災地ボランティアなども行っている。この研修では水や同社の「チキンラーメン」など限られた物しか持たされず、「食の大切さ」を同時に学ばせることも目的だという。

 他にもTDK<6762>が行っている新入社員研修の「竹とんぼ」合宿などユニークな社員教育を導入している企業は多数あるが、将来、自分の会社を背負うべき人材を育てる術も、「時代」と「育った環境」を配慮しつつ、企業の個性も織り交ぜなくてはならない。一部では、リーマンショックの時に入社した従業員の離職がこれから増加するのではとの懸念の声も上がっており、企業側はますます人材育成に工夫をしていかなければならないのかもしれない。

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