上場企業による早期退職者募集は今年も止まらないのか
2013年1月8日 11:00
昨年、3年ぶりに前年を上回った上場企業における希望・早期退職者数。昨年はNEC <6701> やシャープ <6753> 、ルネサスエレクトロニクス <6723> など大手による募集に注目が集まったが、2013年も、その傾向は続いているようである。
1月7日、電通 <4324> が早期退職100人を募集すると発表。同社が早期退職制度を実施しるのは平成19年以来6年ぶりとなる。勤続10年以上で40歳から59歳の社員を対象として実施される本早期退職優遇制度は、業績悪化に伴うリストラではなく、社員個々人にふさわしいキャリアプランを具現化するための選択肢の提供だという。その為、通常の退職金に加算退職金を加えた退職金を支給するだけではなく、新分野への転身等を希望する社員に対しては再就職支援サービスも実施するとのこと。しかし電通グループは2012年度の上期において、一昨年の震災による落ち込みからは回復し計画通りの実績を残しているものの、電通単体では計画に届いておらず、グループ会社の業績でカバーしている状態である。平成24年11月度の単体売上でも前年比95.1%となっており、今回の早期退職制度の目的が「キャリアプランの具現化」だけにあるとは、にわかに信じがたい。勤続10年以上で40歳から59歳の社員が対象であることも、賃金の比較的安価な若年者を残し、一定期間を経過しても実績を残せない社員を切り捨てることで少しでも人件費を減少させようという意図がうかがえるであろう。業績に伴うリストラ自体は責められたことではない。しかし、電通の規約などにもよるであろうが、通常、自己都合退職金よりも会社都合退職金の方が高額である。こうした差額をも出し惜しむほど、決算の数字以上に内部では危機的状況にあるのかもしれないと勘繰りたくなるものである。
一方で、抜本的な経営構造改革の一環としてグループ全体の人員の適正化を図る目的で希望退職の募集を実施すると発表したのがタカラトミー <7867> である。同社の募集人員は本体とグループ会社3社合計で150名程度。こちらも通常の会社都合退職金に特別加算金を上乗せして支給する上、希望者に対しては再就職支援会社を通じた再就職支援を実施する。昨年11月には平成25年度3月期の通期での業績予想を売上高で10%以上、営業利益や経常利益で50%前後の下方修正を実施しており、詳細は労働組合との協議の上としているが、その内容次第では昨年のシャープのように、早期に募集人員を超える応募があるのではないだろうか。
新政権誕生以降、株高・円安に見られるように、景気回復への期待が高まっている。これを日常生活でも景気回復を実感出来る状況にまで高め、業績に伴う早期退職制度の実施社数や倒産件数が少しでも減少する一年となることを期待したい。