デジタルヘルスケア市場、拡大に向け再編・参入が加速した2012年
2013年1月7日 12:00
スマートフォンやタブレットPCといった市場拡大中の製品の他、液晶パネルなどといった企業の屋台骨を揺るがしている製品ばかりが注目を集めた2012年。その裏で、何度か話題となり、今年のシーテック2012でも特設コーナーが設置される程、今後の市場拡大も期待される市場でありながら、なかなか話題を集めない市場がある。それがデジタルヘルスケア市場である。
今年、この市場で最も注目を集めたのが、オリンパス<7733>及びソニー<6758>による業務提携契約及びソニーを割当先とするオリンパス普通株式の第三者割当増資に関する資本提携契約締結であろう。この契約の目的には、コンパクトデジタルカメラ領域を主とするカメラ事業での競争力強化も挙げられているが、中心となるのは、内視鏡を始めとする医療事業での競争力強化である。両社はすでに医療事業に関する合弁会社の設立に向けて動いており、平成25年4月1日までには新会社が設立できる見込みだという。また、カーエレクトロニクスやホームエレクトロニクスを中心に手掛けるパイオニア<6773>も、大塚ホールディングス<4578>の子会社である大塚メディカルデバイスとの間で、新たな医療用内視鏡の共同開発を目的とした業務提携を実施。半導体メーカーのローム<6963>も、唾液センサを用いてストレスを測るデジタル免疫システムを開発するなど、大手メーカーが相次いでこの市場に注力を始めている。
日本のみならず、多くの先進国で進む高齢化や、新興国での人口増加により、世界での医療機器市場は拡大傾向にある。みずほコーポレート銀行のデータによるとその市場は、2006年に1953億ドルであったものが2009年には2336億ドルにまで拡大、今後は医療費抑制策などにより成長が鈍化するものの年率4.9%で成長を続け、2015年には3109億ドルにまで達すると予測されている。中でも、世界最速で高齢化が進んでいる日本では、2006年から2009年まで年率8.9%と世界市場を上回るペースで拡大しており、今後もこの傾向が続くことに間違いはないであろう。しかし、高齢化に依存した国内市場の拡大は、いずれ縮小傾向に転ずることも想像に難くない。そうなった時、海外への展開というのが常套手段となるが、諸外国ごとの厳しい規制などにより他の産業に比べてハードルは高い。目先の市場拡大に慢心することなく、数十年先まで安定した事業とするための施策を講じることができるのか。来年以降の動向に注目したい。