総選挙も相場も「風」の読み方、起こし方、乗り方がポイント?=浅妻昭治
2012年12月17日 10:26
<マーケットセンサー>
永田町事情にはまったくの門外漢のシロウトが、選挙に言及するのは越権行為であることは重々承知している。しかし、選挙も、相場と同じように生もの、「風」のように見えない、捉えどころにないものであると思い当たると、どうしても一言、感想を述べたくなるのは、野次馬根性の悲しさではある。風を読み、風を起こし、風に乗らなければリターン(勝利)は覚束ないのは、選挙も相場も何ら変わらないと、きょう16日の衆議院選挙の開票作業が始まる前のテレビ画面を見ながら考えさせられているのである。
この衆議院選挙は、新聞・テレビなどの報道各社の情勢分析によれば、野党自民党の圧勝、与党民主党の惨敗と事前に観測されている。野田民主党に追い風は吹かず、逆風が吹いていたことになる。あの11月6日の米国大統領選挙では、共和党のロムニー候補と直前まで支持利率が拮抗していたオバマ大統領が、再選を勝ち取ったのは、選挙直前に米国東部を襲ったハリケーン「サンディ」で、「有事の指揮官」ぶりを大きくアピールしたことが要因になったといわれているのとは、大きな違いである。
野田佳彦首相にだって総選挙前には、数々の「有事」が起こっていたのである。笹子トンネル事故や北朝鮮による人工衛星と称するミサイルの発射、中国の領空侵犯などなどで、「サンディ」に勝るとも劣らず「有事」は貨車に乗るほどやってきたのである。ところがこの「有事」が、むしろ「日本を取り戻そう」と訴える安倍自民党には追い風となり、野田民主党には逆風となったようである。
東日本大震災が発生したときに、この「有事」を政権延命のチャンスとばかりしゃしゃり出た菅直人前首相はやり過ぎだったとしても、野田首相にも「風」を読み、「風」を起こし、「風」に乗るためのチャンスはあったわけで、逆にそれだからこそ首相の有事対応の力量不足、ことによったら事前の戦闘放棄・敗北主義・諦めなどが、見え隠れしているのではないかと思わざるを得ない。
さらに問題としたいのは、総選挙時期を師走とした勝負感(相場感)である。野田首相が、野党党首との会談で、「近いうち」の解散総選挙を約束したのは、今年8月のことである。それを先送りに先送りして、解散総選挙を表明したのは11月14日であった。11月16日の解散まで100日間の先送りであった。政治にも相場にも「たら・れば」は禁物である。しかし、もし約束通りに「近いうち」に解散総選挙に踏み切っていたとしたら、野田民主党は、各選挙区での急な候補者選びに難渋するほどの大量の離党者に見舞われることはなかったはずである。
また「近いうち」に解散総選挙に踏み切っていれば、政敵の自民党は谷垣禎一前総裁が、総選挙を指揮していたはずで、野田首相にとって谷垣前総裁と安倍晋三現総裁とで、どちらが戦いやすい相手だったか、違いが出たはずで、これほどの報道各社の惨敗観測にはつながらなかったかもしれない。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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