森山大道の写真集「white and vinegar」発売を記念して展覧会を開催

2012年11月26日 18:45


「ブレ・ボケ・アレ」と称される粒子の粗い作風で日本のみならず世界でも高い評価を受ける写真家、森山大道。彼がモノクロームのインスタントフィルムで撮り下ろした写真集「white and vinegar」の出版を記念した写真展が、2012年12月14日(金)から2013年1月27日(日)まで、東京・中目黒のImpossible Project Spaceで開催される。その他にもアートディレクター町口覚やキュレーター本尾久子によるトークショーも行われる予定。


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本展で日本先行発売される写真集のタイトル「white and vinegar」は、「もしも世界から、印画紙もフィルムも現像液も、写真に関わるすべてが消失したとしたら、スーパーマーケットで卵と酢をしこたま買ってきて、卵白と酢を混ぜてそこらにある紙に塗り、なんでもいいから物をその上に乗せて、日光に当てレイヨグラフ(日光写真)をつくればよいのだ」と書いた森山の言葉に由来する。



被写体は主に森山の自室に積もる紙媒体。大量のインスタントフィルムに写しこまれてセピアに変色し始めていた約10センチ四方のモノクローム世界が、デザイナーによって35ミリフィルムサイズにトリミングされ、サーモン・オレンジとブラックによって2色分解されたイメージへと印象を変えて、我々の目に飛び込んでくる。



例えば現像液がもれ不可測の痕跡を残すように、フィルムの定着は時に予測を裏切る。イメージがたちあらわれるまで、何分も待たなければならないし、定着までの環境によって不規則に変動することもある。ブレ防止や鮮明さを追求するテクノロジーを開発してきた現代の流れと逆行しながら、あっという間に時間に押し流される未来と、限りなく記憶のなかで明滅する過去との交差点である「今」を強く意識させる。



その意味でインスタントフィルムが媒介するのは、写真家の思想だ。写真の本質的な思想を体現しているというだけではなく、フィルム上に露れる非現実の色味とコントラストが漂わせるノスタルジックな空気に揺り動かされるからというだけでもない。影像の不可思議な変化のなかに、生々しいまでに動的な生命の気配を嗅ぎ取れるからかもしれない。



【写真集について】

「white and vinegar」

※本展会場で、日本先行発売

判型:W210mmxH257mm

頁数:88

図版点数:42

発行:MATCH and Company ltd.【MMMレーベル】



【問い合わせ先】

Impossible Tokyo KK

TEL:03-5459-5093


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