【アナリストの眼】『強気相場は懐疑の中で育つ』型の展開

2012年11月25日 19:32

<相場展望>

  来週(11月26日~30日)の株式市場については、大勢として引き続き強基調の展開を想定する。

  当面は為替の円高修正トレンドの継続が焦点となり、急ピッチの上昇に対する警戒感などで常識的にはスピード調整も必要だろう。しかし、米国の「財政の崖」問題など海外要因に対する警戒感は後退している。国内要因のキーワード「円安・金融緩和・財政出動」に対する期待感が引き続き優勢となる可能性が高いだろう。衆院選に向けて期間限定の反発との見方も強いようだが、格言の「強気相場は懐疑の中で育つ」のとおり、すでに衆院選後を睨んだ強気相場がスタートしている可能性もあるだろう。

  前週(11月19日~22日)は週末に3連休を控えていたが、日本の株式市場は続伸した。為替が円安方向に傾いたことに加えて、米国の株式市場が反発したことも安心感に繋がり、輸出関連・景気敏感関連の主力大型株を中心に買いが優勢だった。週末22日の日経平均株価の終値は9366円80銭となり、終値ベースで5月2日(9380円25銭)以来となる9300円台を回復した。

  安倍晋三自民党総裁の「無制限の金融緩和」や「日銀法改正」という発言に対しては、政府・与党民主党からの批判だけでなく、金融界にもその実現性を疑問視する声は多いが、投資家においては期待感が優勢のようだ。東証1部市場の売買代金は、11月15日から22日まで6営業日連続で1兆円を超えている。単なる買い戻しだけではなく、海外投資家を中心に新規の買い資金が流入している可能性があるだろう。テクニカル面で見ても、日経平均株価が9月の戻り高値9288円53銭を上抜けたことで強基調を確認した形だろう。

  さらに、11月19日~20日の日銀金融政策決定会合は現状の金融政策維持を決定したが、景気後退局面入りという状況を受けて次回12月会合では追加緩和という見方があり、当面の支援材料に繋がる可能性もあるだろう。輸出関連・景気敏感関連の主力大型株に比べて、急ピッチの上昇過程でやや放置された感のある内需系中小型株に物色が循環するかも焦点だろう。

  海外の懸念材料については引き続き警戒が必要だが、足元では状況に大きな変化がなく、当面は楽観的な見方が優勢になりそうだ。米国の「財政の崖」問題に関しては、タイムリミットのクリスマスまでチキンレースが繰り広げられる可能性も残されているが、最終的には妥協案をまとめざるを得ないという見方が優勢であり、議会の与野党双方から妥協に向けての前向きな発言も聞こえてくることから、当面は楽観論が優勢になりそうだ。こうした楽観論も背景に前週末23日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均株価が大幅上昇して1万3000ドル台を回復している。

  ユーロ圏に関しては、26日のユーロ圏財務相会合でギリシャへの次回融資が承認されるかが当面の焦点となるが、前週末23日の欧州の主要株式市場は概ね上昇し、外国為替市場でもユーロ買いが優勢になっている。ギリシャ支援問題に対して楽観的な見通しのようだ。中国の新体制移行後の政策に関しては消化不良の状況が続きそうだ。

  なお中東ではイスラエルとハマスが停戦に合意したため、ガザ地区への地上軍侵攻という事態は避けられたが、当面は緊張が続きそうだ。また東アジアでは北朝鮮がミサイル発射準備との報道があり、波乱要因として地政学リスクに注意は必要だろう。

  注目スケジュールとしては、26日の日銀決定会合議事要旨(10月30日分)公表、米10月シカゴ連銀全米活動指数、27日の米9月住宅価格指数(連邦住宅金融局)、米9月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米10月耐久財受注、米11月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)、28日の米10月新築一戸建て住宅販売、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、29日のユーロ圏11月景況感・業況感指数、米10月住宅販売保留指数、米7~9月期GDP改定値、30日の日本10月鉱工業生産速報、日本10月全国・11月東京都区部消費者物価指数、ユーロ圏11月消費者物価指数速報値、米10月個人所得・消費支出、米11月シカゴ地区購買部協会景気指数、12月1日の中国11月PMI(国家統計局)などがあるだろう。

  その後には、12月5日の米11月ADP雇用報告、5日~6日の英中銀金融政策委員会、6日のECB理事会、7日の米11月雇用統計、11日~12日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、13日~14日のEU首脳会議などが控えている。(本紙・シニアアナリスト水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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