NECと科学警察研究所、ポータブル型DNA解析装置の共同評価を実施
2012年11月24日 20:43
NECは22日、現在開発中である、DNAの抽出から解析までのプロセスを一貫して行うことのできる個人識別用ポータブル型DNA解析装置の精度について、科学警察研究所と共同評価を実施したと発表した。共同評価は今後2013年度末まで継続する予定。
ポータブル型DNA解析装置は、装置と消耗品である解析チップ(解析するためのプラスチック板)および試薬パッケージで構成される。NECはパートナー企業とともに、解析チップおよび試薬パッケージについて、微量の液体を制御する技術を安価に装置に実装することを可能にした。この解析チップおよび試薬パッケージを装置と組み合わせることで、従来の解析作業で必要であったピペットを用いた解析を不要とし、容易な操作性を実現する。
DNA解析のプロセスは、1.細胞の採取、2.DNAの抽出、3.DNA量を増やすPCR増幅、4.DNAの大きさを調べる電気泳動、5.個体差を判別するSTR解析、から成り立つ。同装置は、通常個別の装置で行うこれらのプロセスを一貫して行うことが可能。この一体化により各プロセスが連動し、また、加温冷却を繰り返し行うPCR増幅作業が大幅に高速化することでDNA抽出プロセスから解析プロセスまでの作業を短縮し、今回の評価機で実施する全工程を約60分で完了する。さらに、一体化した装置はおよそスーツケース大まで小型化しており、使用場所を移動しての活用が可能。
共同評価の第一弾として、NECと科学警察研究所は10月24日~11月7日に、科学警察研究所の提供するDNAサンプルを用い、実用化を視野に入れた評価を行った。従来のDNA解析手法による解析結果と同装置で行った解析結果を比較し、評価を行った結果、将来を期待するに十分な精度と再現性を有することを確認したという。
科学警察研究所は、今回の評価結果についていくつかの課題を指摘しながらも、「これらの課題が改善されれば、迅速なDNA型検査法の確立につながる可能性がある」とコメントしており、引き続き、警察活動への貢献に資するべく共同研究を継続していくとしている。
NECは、同装置を犯罪捜査の迅速化や犯罪の抑止に役立たせ、安全・安心な社会の実現に貢献できるよう、今回の評価を通じてさらなる装置の改良を続け、2014年度の商用化を目指す。