より静かな賃貸住宅をめぐる「静かな」住宅メーカーの戦いとは

2012年10月29日 11:00

 省エネや創エネ、そしてCO2削減をも含んだスマートハウスの開発競争・商品展開が活発な住宅業界において、今、より快適な住環境創造へ向けた静かな戦いが起こりつつある。それが賃貸住宅等における「上下階の音」にまつわる技術開発・商品展開である。

 その端緒となったのが、10月22日に大和ハウスが発表した高遮音床仕様「サイレントハイブリッドスラブ 50(SILENT HYBRID SLAB 50)」である。この技術は、軽量鉄骨造の躯体とプレキャストコンクリートの床版を組み合わせた新たな高遮音床で、遮音性能「LH-50」「LL-40」を実現したもの。「LH」とは子どもの飛び跳ねなどの重量床衝撃音に対する遮断性能、「LL」とは食器の落下音などの軽量床衝撃音に対する遮断性であり、いずれも数値が低い方が遮音性に優れる。品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)による等級表示では、「LH-50」「LL-40」ともに最高等級以上の遮音性能を達成、同社従来の仕様と比較して、聞こえる音を3分の1程度にまで低減しているという。

 一方、この分野で先行しているのは積水ハウス。2年前の2010年9月からオリジナルの遮音床を販売し、着実に普及を進めてきた。「シャイド55(SHAIDD55)」として販売されている同社の遮音床システムには、中空のプレキャストコンクリート板に瓦を細かく砕いた粒子を埋め込んだり、防振動吊り天井などの独自の特許技術が駆使されており、音響に関する工業技術の進歩発展に特に貢献したとして、日本音響学会の第20回技術開発賞を受賞するなど、多方面から高い評価を受けている。この技術は軽量鉄骨または重量鉄骨の2階建て・3階建て賃貸商品「シャーメゾン」の受注好調を支えており、9月の賃貸商品の受注は前年比21%増、「シャイド55」の搭載率は8割弱にまでアップしている。この好調に、大和ハウスが追随した形ともいえるであろう。「シャイド55」の主力仕様はL55(LH-55、LL-55)である。一見、大和ハウスの「サイレントハイブリッドスラブ 50」の方が遮音性に優れているようだが、積水ハウスの担当者曰く「コストパフォーマンスに優れているものとしてL55が人気があるが、L50(LH-50、LL-40)も当然用意している」という。

 この背景には、我が国の賃貸住宅の質が、戸建住宅や分譲マンションに比べてまだまだ低いという問題がある。プライバシー重視や権利意識の高まりを受けて、共同住宅での「音」をめぐるトラブルは後を絶たない。一方で賃貸住宅はオーナーの収益重視で見過ごされてきた。「賃貸住宅の居住性能が競って高くなるのは歓迎すべきこと」(前出の積水ハウス担当者)。静けさをめぐる、静かな戦いが、賃貸住宅での生活をより快適にしてくれることを期待したい。

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